訪問介護における認知症ケアの本質
1. 訪問介護における認知症ケアの本質
―「正解を提供する仕事」ではなく「崩れない日常を支える仕事」
施設ケアと決定的に違うのは、訪問介護は『生活の主導権が利用者側にある』という点です。
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認知症があっても
→ その人の家
→ その人の生活史
→ その人の価値観
の中に介護者が「入っていく」
つまり訪問介護の認知症ケアとは
医学的に正しい対応よりも、「その人にとって破綻しない関わり」を選び続ける仕事です。
2. 認知症の中核症状と訪問介護の現実
中核症状(記憶障害・見当識障害・実行機能障害)
訪問介護では、これらが生活動作に直結します。
例:
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「さっきトイレ行ったでしょ?」→行っていない
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服を着ようとして途中で止まる
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食事の手順が分からず怒り出す
👉 重要なのは「できない理由」を探ることではない
訪問介護では
「できないことを説明する時間」より
「できる形に環境を寄せる工夫」
が圧倒的に成果を出します。
3. BPSD(行動・心理症状)と訪問介護の相性
なぜ訪問介護はBPSDが起きやすいのか
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短時間
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人が毎回変わる
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生活の“途中”に介入する
これは認知症の人にとって
「世界が頻繁に書き換えられる状態」です。
現場でよくあるBPSD
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介護拒否
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被害妄想(「盗まれた」「勝手に入った」)
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暴言・暴力
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帰宅願望(自宅なのに)
4. 管理者として現場に徹底してきた原則
原則①「正すな、合わせろ」
認知症ケアで最もやってはいけないのは現実の押し付け。
❌「それは違います」
❌「もう何回も言ってますよ」
⭕「そう思われたんですね」
⭕「じゃあ一緒に確認しましょうか」
👉 事実より感情を先に受け止める
原則②「介護計画は“動線”で考える」
認知症の方は言葉より身体が覚えている。
例:
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トイレ誘導は声かけより
→ トイレ前まで一緒に歩く -
更衣は説明より
→ 服を視界に入れる
訪問介護では
5分で成果が出る動線設計が命です。
原則③「介護者を守るケアを組み込む」
認知症ケアは、介護者の感情を削ります。
管理者として必須なのは
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「一人で抱えさせない」
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「感情労働であることを明示する」
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「困ったら戻ってきていい空気」
これがない事業所は
👉 必ず離職が起きます
5. 訪問介護ならではの強み
施設ではできず、訪問介護だからできることもあります。
① 生活史が「そのまま」使える
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仏壇
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写真
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家具配置
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台所の癖
これらは最強の認知症ケアツールです。
② 小さな変化に気づける
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ゴミの量
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冷蔵庫の中身
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洗濯物の溜まり方
👉 これはBPSDの前兆検知になります。
③ 家族支援が同時にできる
訪問介護は
本人ケア6割、家族ケア4割くらいがちょうどいい。
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叱らない関わり方
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期待値を下げることの大切さ
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「できなくなった=終わり」ではないという視点
6. 管理者として一番伝えたいこと
訪問介護における認知症ケアは
「上手に介護する技術」ではありません。
それは
その人の世界が崩れないように
そっと支柱を立て続ける仕事
です。
そして同時に
介護者の世界が壊れないように
管理者が背後で支える仕事
でもあります。