記述式ケース問題56 72歳女性、アルツハイマー型認知症を患い、認知症周辺症状(不安、妄想、徘徊など)が見られる。排泄ケアにおいてはトイレの場所を忘れたり、トイレに行くことを拒否することがある。
症例56
- 患者情報 72歳女性、アルツハイマー型認知症を患い、認知症周辺症状(不安、妄想、徘徊など)が見られる。排泄ケアにおいてはトイレの場所を忘れたり、トイレに行くことを拒否することがある。家族は子どもたちが遠方に住んでおり、主に訪問介護サービスを利用している。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら排泄ケアの支援計画書を作成してください。以下の点を含めてください。
- 初回から短期的および長期的な目標を設定してください。
- 在宅介護者と当事者の今後が見えるようなアドバイス内容を示してください。
- 社会資源を有効活用するための提案をしてください。
- SWOT分析とクロスSWOT分析を行い、支援計画を策定してください。
- BSC(バランススコアカード)とKPI(重要業績評価指標)を用いて進捗状況を求める形式でまとめてください。
解答例
1.
短期的目標 (1〜3ヶ月)
- 目標1 患者がトイレに行くことを週に3回受け入れる。
- 目標2 排泄時の不安感を軽減するため、リラックスした環境を整える(音楽や香りの利用)を実施する。
- 目標3 訪問介護サービスを週に2回利用し、専門職からのサポートを受ける。
2.
長期的目標 (6ヶ月〜1年)
- 目標1 患者がトイレに行くことに対する不安感を軽減し、自発的にトイレに行くことができるようにする。
- 目標2 家族が介護に関する情報を得て、患者の排泄ケアに積極的に関与する。
- 目標3 地域の支援ネットワークを活用し、定期的な情報交換や研修に参加する。
3.
アドバイス内容
- 介護者へのアドバイス
「患者さんが安心できる環境を整えるために、トイレの場所を明確に示すサインをつけたり、トイレに行く際には穏やかに声をかけることが重要です。また、リラックスできる音楽をかけておくと良いでしょう。訪問介護サービスを利用することで、専門家のサポートを受けながら効果的にケアできます。」
- 当事者へのアドバイス
「トイレに行くことが大切だよ。もしトイレがわからなくなったら、私たちが助けるから安心してね。」
4.
社会資源の有効活用
- 地域の訪問介護サービスを利用し、専門職からの指導を受ける。
- 認知症サポートグループや地域の福祉施設のプログラムに参加し、情報交換を行う。
SWOT分析
Strengths
(強み) |
Weaknesses
(弱み) |
-
家族の支援が少ないが、訪問介護サービスがある |
-
排泄ケアに対する拒否感が強い |
-
訪問介護サービスによる専門的支援が得られる |
-
認知症による判断力の低下 |
Opportunities
(機会) |
Threats
(脅威) |
-
地域の認知症サポートプログラムの存在 |
-
症状の進行によるケアの複雑化 |
-
新しいケア技術の導入が可能 |
-
介護者のストレスの増加 |
クロスSWOT分析
強み (S) |
機会 (O) |
S-O戦略 |
-
訪問介護サービスによる専門的支援 |
-
地域の認知症サポートプログラムの存在 |
サポートプログラムに参加し、介護技術を学び、実践に活かす。 |
-
家族の支援が少ないが、訪問介護がある |
-
新しいケア技術の導入 |
訪問介護サービスを通じて新しい技術を取り入れる。 |
弱み (W) |
脅威 (T) |
W-T戦略 |
-
排泄ケアに対する拒否感が強い |
-
症状の進行によるケアの複雑化 |
早期に専門職の支援を受けて、効果的なケア方法を導入する。 |
-
認知症による判断力の低下 |
-
介護者のストレスの増加 |
定期的なカウンセリングを受け、介護者のメンタルヘルスを支える。 |
BSC(バランススコアカード)とKPI
視点 |
目標 |
指標 |
KPI |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客 |
患者の排泄ケアの受け入れ |
受け入れ回数 |
受け入れ回数 (目標 週3回) |
週1回 |
環境調整の見直し |
財務 |
コスト効率の良い介護 |
社会資源の利用率 |
利用率 (目標 75%) |
60% |
新たな資源の調査 |
内部プロセス |
排泄ケアの質を向上 |
専門職による評価 |
評価の質 (目標 良好) |
中程度 |
定期的な評価の実施 |
学習・成長 |
介護者のスキル向上 |
研修参加率 |
参加率 (目標 80%) |
50% |
次回研修の計画 |
解説
この支援計画を通じて、短期的および長期的な目標を明確にし、介護者と当事者がともに成長していく姿を見えるようにすることが重要です。社会資源を活用し、SWOT分析を通じて強みを最大限に活かし、課題に取り組むことで、より良い排泄ケアを実現していくことが可能です。