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ポジショニングと排泄ケアについて

  ポジショニングと排泄ケアについて 排泄ケア総合研究所(排総研) 家庭の排泄ケア相談所 社会医療法人 地域総合サービスセンター 副センター長 山口勇司 【はじめに】 ポジショニングと排泄ケアは、患者の快適さと健康を維持するために密接に関連しています。ポジショニングは、特に床上での排泄を支援する際に重要であり、適切な体位が排泄プロセスを促進し、褥瘡(じょくそう)のリスクを減少させることができます。   【ポジショニングの重要性】 ポジショニングは、患者が自然で快適な排泄を行うために不可欠です。安定した姿勢は、腹圧をかけやすくし、排泄を容易にします。例えば、麻痺がある患者の場合、麻痺側外側にピローを入れて安定させることが推奨されています。 1)   【排泄ケアと褥瘡予防】 排泄ケアは、褥瘡予防にも直接的な影響を与えます。長時間同じ姿勢でいることは、特定の体の部分に圧力をかけ、褥瘡のリスクを高めます。適切なポジショニングによって体圧を分散させ、褥瘡の発生を防ぐことができます。 2)   【実践的なポジショニングの進め方】 実践においては、患者の体格や状態に応じた便器や尿器の選択、オムツの使用、そして体位の調整が重要です。例えば、腹圧をかけやすくするために、頭側を少し挙げる(約 30 度)ことが有効です。また、オムツを使用する場合は、オムツ内の湿潤環境と保水による殿部圧の上昇に注意し、褥瘡発生のリスクを管理する必要があります。   【結 論】 ポジショニングと排泄ケアは、患者の快適性と健康を支えるために相互に関連しています。適切なポジショニングは、排泄を促進し、褥瘡のリスクを減少させるために重要な役割を果たします。看護師は、患者の個々のニーズに応じて、最適なポジショニングと排泄ケアを提供することが求められます。   【参考文献】 1). 江村真弓 . 排泄援助場面(床上排泄)でのポジショニング | 看護 roo![ カンゴルー ] (kango-roo.com), 2024/02/08 2). 田中マキ子 . 褥瘡予防のためのポジショニング.中山書店,東京, 2006. 2

紙おむつ使用時のもれの原因と対処方法

紙おむつ使用時のもれの原因と対処方法について 大人の介護用紙おむつが尿や便のもれを起こす原因と対処方法について説明します。尿や便のもれは、個人の状況によって異なる要因が考えられますが、以下に一般的な原因と対処法を挙げます。   【現状分析】 ①   何処から漏れているか (前・後・鼠経部) ②   どのくらい漏れているか (パッドの吸収程度・シーツ・衣類) ③   どのように漏れているか (その時の状況・身体の向き) ④   その他 (左右のズレ、前後のバランス、鼠径部のゆるみ、尿量オーバー、陰茎の向き、片側集中、いじり・はずれ、排便多量、他)   【尿のもれの原因と対処方法】 ①   適切なサイズの使用 : サイズが合わない場合、おむつが密着せずにもれることがあります。適切なサイズを選びましょう。 ②   おむつの装着方法 : おむつを正しく装着しないともれることがあります。おむつの製造元の指示に従って正しい装着方法を確認しましょう。 ③   吸収力 : おむつの吸収力が不足しているともれることがあります。高吸収力の製品を選ぶか、頻繁に交換することが大切です。 ④   おむつの交換頻度 : おむつの交換を適切な頻度で行うことが重要です。尿が溜まりすぎるともれの原因になりますので、定期的な交換が必要です。   【便のもれの原因と対処方法】 ①   おむつのサイズ : 尿のもれと同様に、適切なサイズのおむつを選びましょう。 ②   適切な形状のおむつ : 便のもれを防ぐために、特に便に対応した形状のおむつを使用することが重要です。 ③   便通の管理 : 便通を定期的に管理し、便秘や下痢を予防することが大切です。食事や水分摂取、運動などに注意しましょう。 ④   バリアクリームの使用 : 便による皮膚への刺激を軽減するために、バリアクリームを使用すると効果的です。   重要な点として、尿や便のもれには個人の状況や体質によって原因が異なるため、何が原因であるかを理解するために専門家に相談することが重要です。専門家のア...

おむつの装着方法には介護者によって上手い・下手がある!

おむつの装着方法には介護者によって上手い・下手があり、おむつを適切にフィットするよう装着するためには、重要な手順があります。これらの手順に従うことで、漏れを防ぎ、おむつが利用者にとって、より快適なものとすることができます。おむつ装着のポイントは次のとおりです。 ※おむつ交換の手順 1 . 事前に準備するもの ①   おむつ(テープ式) ②   尿とりパッド ③   使い捨て手袋 ④   タオル(温かいお湯で絞ったもの、乾いたもの) ⑤   トイレットペーパーまたはティッシュ ⑥   ぬるま湯の入った容器(陰部洗浄用※お湯の温度に注意) ⑦   バケツ(または専用の洗面器) ⑧   新聞紙 ⑨   ビニール袋   2 . テープ式おむつ・パッドの準備 ①   先ずは、製品のサイズ、吸収量、各種特徴と装着手順等の説明内容を熟読し理解してから開封する。不明な点は製品メーカー窓口に問い合わせする。 ②   ディスポ手袋を着用する。(衛生的でない手で菌を媒介する恐れがあり、相互の安全を保持するため) ③   パッドやおむつを振らない。(おむつの中の高分子吸水ポリマーが偏り尿漏れの原因となるため) ④   包装されたおむつやパッドは、きっちりたたまれ圧縮されているので、縦の中心で折ってからパッドの長方両端を持ち軽く引っ張り伸ばすことで立体ギャザーをしっかり立てる。パッドのギャザーがしっかり立つと立体の船形になる。(立体ギャザーは、尿漏れを防ぐ堤防の役割をします。立体ギャザーがつぶれていると、堤防がない状態になり、尿漏れしやすくなります。) ⑤   さらに、介護者はギャザーをしっかり立てるため、人差し指と親指を開き、ギャザーの端から端まで内側を通してギャザーを確実に立てる必要があります。(ギャザーが立っている確認の意味でも実施するとよい) ⑥   テープ式おむつのモレ防止立体ギャザーの内側に、尿とりパッドを入れます。 2 . 使用済みおむつを包むための新聞紙を広げ、ビニール袋を開いて準備しておく。 3 . おしぼりなどを使いやすいように用意をする...

紙おむつの知識と装着技術

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紙おむつの知識と装着技術 紙おむつを分類すると、外側のおむつ(アウター)には「パンツ式」と「テープ式」があり、内側のおむつ(インナー)には「パッド式」があります。身体サイズに合わせ、おむつには SS ~ LL サイズ等があり、パンツ式はウエスト、テープ式はヒップの大きさで選択します。また、被介護者の自立度に沿っておむつが選択されます。歩行が可能な方には動きやすいパンツ式が、ベッド上で過ごす時間が多い方には交換がしやすく体にぴったり装着できるテープ式紙おむつが適しています。 紙おむつの製品単価はパンツ式は¥ 150 ~ 250 で、テープ式は¥ 150 ~ 200 、パッド式は¥ 50 ~ 150 程度です。各おむつの尿吸収量の目安は、 1 回分の排尿量を 150 ㎖として換算し、 3 回分のパッドなら 450 ㎖の尿を吸収できることになります。そこで、先ずは大きめのものを用意して、 2 ~ 3 日排尿記録をつけ、尿量が少なければ小さいものに変えるなどして、適切な吸収量のおむつを使っていきましょう。排泄ケアには尿量と交換頻度で紙おむつを選択します。交換の頻度が多い場合は、アウターとインナーを併用し、インナーのパッドだけを取り替える事で、経済的に節約することができます。 紙おむつは、多くのメーカが生産しており、メーカー毎に タイプ、サイズ、吸収量、各種特徴ある工夫など多品種が存在し、おむつの選択と当て方には、正しい知識や技術が必要となっています。   例えば、おむつメーカーの特徴ある工夫として、日中の活動時は動きやすいパンツ式として、体調が悪い時や夜間は交換しやすくモレにくいテープ式として使用できる「両用タイプ」。太ももが細く、足回りの隙間漏れを防止する「パンツ式ロング丈タイプ」。また、男性専用のペニスを収める「ポケットタイプ」の尿取りパッド、その他の肌接触素材・ギャザー丈・ニオイ防止・繊維の織や縫、軽失禁時の軽薄短小の工夫等、多々存在します。  

浸軟による失禁関連皮膚炎

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浸軟による失禁関連皮膚炎 失禁関連皮膚炎は、尿や便が皮膚に触れることによって引き起こされる皮膚炎の一種で、おむつを着用する高齢者にとって大きな問題となっています。高齢者の皮膚は弱く、尿や便の刺激が通りやすくなっています。おむつはまた、湿気によりムレが生じ、問題を悪化させる可能性があります。皮膚が湿った状態で長時間続くと、むくみや刺激を受けやすくなります。少しこすったり動かしたりするだけでも、赤みやただれの原因となります。 失禁関連皮膚炎の予防と自立排泄への取り組み 失禁関連皮膚炎を予防するためには、横になったままの排便を避けることが重要です。特に、座位になると重力や内臓の重みで排便が楽になります。また、おむつだけに頼るのではなく、自律的な排便を促し、浸軟を引き起こす可能性のある尿、軟便、水様便では、トイレを使用することが役立ちます。ただし、ADLの低下や下痢のある方はおむつが必要です。最も重要なことは、失禁関連皮膚炎を防ぐための適切なスキンケアと、適切なタイプのおむつの使用が必須となります。   失禁関連皮膚炎予防のためのスキンケア 失禁関連皮膚炎を予防するには、徹底した洗浄、保湿、保護、おむつの選択が重要です。それらを順番に見ていきましょう。 ①   洗浄: 刺激の少ない洗剤を使用して、性器と臀部を 1 日 1 回洗います。皮膚バリアを刺激して弱め、IADのリスクを高める可能性があるため、細かい粒子を含んだ洗剤やごしごし擦ることは避けてください。すすいだ後、真菌感染を防ぐために鼠蹊部と臀裂に特に注意を払いながら、その部分をそっと拭き取り布等を押して乾かします。物理的な刺激や感染を避けるために、柔らかく、吸収性の高い使い捨ての拭き取り布等を使用してください。   ②   保湿: 肌の乾燥を防ぐため、洗顔後はすぐに保湿をしてください。そのためには、のびがよく、すばやくのびる水溶性保湿剤が、最適な保湿ケアとしてお勧めです。   ③   保護: 保護剤で皮膚表面を保護し、便の付着や水分の蒸発を防ぎます。 1 日の尿量や体型に合わせて、吸収性・通気性に優れた高機能商品を選びましょう。パッドを重ねて貼ると、漏れやムレ、浸軟の原因となりますので、避けましょう。ギャザーを頻繁にチェックして、股間部分...

排泄物による失禁関連皮膚炎IAD

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排泄物による失禁関連皮膚炎 IAD 排泄物によって引き起こされる失禁関連皮膚炎(IAD: Incontinence Associated Dermatitis )について理解を深めることは重要です。   排泄物関連失禁による皮膚炎 失禁関連皮膚炎は、皮膚が排泄物、滲出液、排泄物などの刺激性の液体に長時間さらされると発生します。このさらされた部分は、 浸軟 (しんなん:皮膚が大量の水分を吸収し、腫れて白くなる現象)が発生し、損傷を受けやすくなります。皮膚への刺激が続くと、皮膚のバリア機能が徐々に低下し、最終的には皮膚障害につながります。尿や糞便にさらされることによって引き起こされる失禁関連皮膚炎は、褥瘡の危険因子でもあるため、特に懸念されています。   水分による肌の変化 正常な皮膚細胞は、外部からの刺激や水分に対するバリアとして機能します。しかし、発汗や失禁などで皮膚の湿った状態が長く続くと、角質細胞(皮膚細胞)が水分を吸収して膨らみ、それらをつなぎとめている構造が崩れてしまいます。その結果、皮膚の耐久性やバリア機能が弱まり、表皮剥離が起こりやすく、異物や微生物が侵入しやすくなります。   排泄物関連の失禁による湿った皮膚 多汗症、多量の汗、失禁による便や尿の汚染で湿った皮膚は、IADの発症につながる可能性があります。これは、尿失禁または便失禁のために臀部の皮膚が常に湿っている場合に発生します。 失禁関連皮膚炎を理解するには、先ず、皮膚の役割と構造を理解することが重要です。皮膚の主な機能は、外部要因から身体を保護するバリアとして機能することで、表皮、真皮、皮下組織(脂肪)の 3 つの層で構成されています。表皮には、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の 4 つの層があります。基底層は、毎日新しい細胞が生成される最下層であり、成熟するにつれて、皮膚の表面に向かって上方に移動します。一番外側にある角質層は、水分を保持するセラミドなどの脂質で満たされ、皮脂腺からの皮脂や汗で覆われています。 簡単に言えば、健康な肌は、水分の蒸発を防ぎ外的要因から守る皮脂膜(一次バリア)と、水分を保持して肌の潤いを保つ角質層(二次バリア)の 2 層構造になっています。 加齢による皮膚変化 表皮の一番内側にある基底層でつくられた細胞...