例題 1標本母平均検定(1群t検定)による排泄ケア時間の比較

例題

1標本母平均検定(1t検定)による排泄ケア時間の比較

ある病院で行われている排泄ケアの所要時間について、新しいトレーニングプログラムの導入前と導入後で変化があったかを調査します。10人の看護師のトレーニング前のデータを使用し、その平均時間が変化したかどうかを1標本母平均検定によって確認します。

トレーニング前のデータX=[28,32,25,30,35,28,29,31,27,33]

帰無仮説   トレーニングプログラムの導入前の平均排泄ケア時間は変化していない

対立仮説   トレーニングプログラムの導入前の平均排泄ケア時間は変化している

1t検定によるPythonコードを示し、計算結果を解釈してください。

 

Pythonを使用して1t検定を行うためのコードは以下の通りです。このコードでは、SciPyという科学計算ライブラリを使用しています。

import numpy as np

from scipy import stats

 

# トレーニング前のデータ

X = np.array([28,32,25,30,35,28,29,31,27,33])

 

# 帰無仮説の平均値(変化していないと仮定)

mu_0 = np.mean(X)

 

# データの平均値

mean_X = np.mean(X)

 

# 1t検定

t_stat, p_value = stats.ttest_1samp(X, mu_0)

 

print(f"帰無仮説の値  {mu_0}")

print(f"データの平均値  {mean_X}")

print(f"t統計量  {t_stat}")

print(f"p値  {p_value}")

実行結果

帰無仮説の値  29.8

データの平均値  29.8

t統計量  0.0

p値  1.0

 

この例題は不思議なことに「なぜ、トレーニング前のデータのみしか分からないのに、トレーニングプログラムの導入後の平均排泄ケア時間が変化しているのが解るのか?不思議です。具体的に優しくお伝えします。

そもそも統計学における検定は、ある仮説が真であるかどうかを判断するための手法です。この場合、帰無仮説として「トレーニングプログラムの導入前の平均排泄ケア時間は変化していない」と設定しました。そして、その帰無仮説が真であるかどうかを判断するために、1t検定を使用します。

 1t検定は、標本の平均値がある特定の値(この場合はトレーニング前の平均排泄ケア時間)と異なるかどうかを判断するための検定方法です。この検定は、標本の平均値が帰無仮説の値と大きく異なる場合、つまり標本の平均値が帰無仮説の値から大きく離れている場合に、帰無仮説を棄却します。

具体的には、標本のデータから計算されるt統計量という値を用いて、帰無仮説の値と標本の平均値との間に統計的に有意な差があるかどうかを判断します。t統計量は、標本の平均値と帰無仮説の値との差を標本の標準誤差で割ったもので、この値が大きいほど帰無仮説を棄却する確率(p値)が小さくなります。

したがって、トレーニング前のデータX=[28,32,25,30,35,28,29,31,27,33]のみから、トレーニングプログラムの導入前の平均排泄ケア時間が変化しているかどうかを判断することが可能なのです。ただし、この結果はあくまで統計的な推測であり、実際の現象を100%正確に反映しているわけではないことを理解してください。また、検定の結果は標本の大きさやデータの性質にも影響を受けるため、その点も考慮に入れる必要があります。このような統計的な手法を用いることで、限られたデータからでも有用な情報を引き出すことが可能となります。それが統計学の力です。

 このpythonコードを実行すると、帰無仮説の値、データの平均値、およびt統計量、pが出力されます。ただし、このコードはあくまで一例であり、実際の分析では検定の前提条件(例えば、データが正規分布に従っているかどうか)を確認する必要があります。また、帰無仮説の平均値は、具体的な研究目的に基づいて設定する必要があります。この例では、帰無仮説の平均値としてデータの標本平均を使用しています。これは、トレーニングプログラムの導入によって平均時間が変化しないことを検証するためのものです。しかし、具体的な研究目的によっては、他の値を帰無仮説の平均値として設定することもあります。この点については、具体的な研究目的と統計的な知識をもとに適切に設定してください。

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