「なぜそれが起きるのか」という背景や生活習慣に目を向ける排泄ケア問診表

前日の問診票が「どのような失敗が起きているか」という現象に焦点を当てたものであったのに対し、今度は「なぜそれが起きるのか」という背景や生活習慣に目を向ける、別の視点からの排泄ケア問診票を提案します。

このアプローチは、問題の根本原因を探り、生活全体を見直すことで排泄の自立を支援することを目的としています。


【生活習慣・背景から考える】排泄ケア問診票

日々の生活習慣が排泄に大きく影響します。ご本人の一日の様子を思い浮かべながら、最も近いものにチェックを入れてください。これは、良い悪いで判断するものではなく、ケアのヒントを見つけるためのものです。

💧 1. 水分摂取について

質問項目はい、できていますやや不足しがちです課題があります
1-1. 日中、こまめに水分(お茶や水など)を摂れていますか?
1-2. トイレを気にして、水分を控えてしまうことはありませんか?
1-3. カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶など)を多く摂りすぎていませんか?

🥗 2. 食事について

質問項目はい、できていますやや不足しがちです課題があります
2-1. 1日3食、だいたい決まった時間に食事を摂っていますか?
2-2. 野菜や海藻、果物など、食物繊維を十分に摂れていますか?
2-3. ヨーグルトなどの発酵食品を食事に取り入れていますか?

🚶‍♀️ 3. 活動・運動について

質問項目はい、できていますやや不足しがちです課題があります
3-1. 日中に座りっぱなしではなく、立ったり歩いたりする時間がありますか?
3-2. 日常生活の中で、意識的に体を動かす機会がありますか?(散歩、体操など)
3-3. ベッドや布団から起き上がって過ごす時間が十分にありますか?

⏰ 4. 生活リズムと環境について

質問項目はい、できていますやや不足しがちです課題があります
4-1. 朝起きた時、食後など、トイレに座る時間を決めていますか?
4-2. 昼夜のメリハリがあり、夜は眠れる環境ですか?
4-3. 体を冷やさないような服装や室温になっていますか?

💊 5. 服薬や体調について

質問項目はい、できていますやや不足しがちです課題があります
5-1. 飲んでいる薬の副作用に、便秘や頻尿がないか確認したことはありますか?
5-2. ご本人がリラックスして、落ち着いて過ごせる時間がありますか?

結果の考え方と「次の一手」

この問診票は、排泄の失敗という「点」ではなく、そこに至る生活という「線」で問題を捉えるためのものです。「やや不足しがち」「課題があります」にチェックがついた項目は、ケアを見直すチャンスです。

  • 「1. 水分」に課題がある場合

    • 次の一手: 水分不足は便秘の、カフェインの摂りすぎは頻尿の大きな原因です。水分を我慢すると脱水や感染症のリスクも高まります。飲む時間帯や種類を工夫してみましょう(例:日中はしっかり、就寝前はコップ一杯にする)。

  • 「2. 食事」に課題がある場合

    • 次の一手: 食事は腸の動きを司る最も重要な要素です。食事時間が不規則だと排便のリズムも乱れます。食物繊維や発酵食品を意識したメニューを考え、まずは一日一品からでも加えてみましょう。

  • 「3. 活動」に課題がある場合

    • 次の一手: 腸の動き(蠕動運動)は、体の動きと連動しています。日中の活動量が少ないと、便秘になりやすくなります。遠くへ行かなくても、座っている時間を減らし、室内で足踏みをするだけでも効果が期待できます。

  • 「4. 生活リズム」に課題がある場合

    • 次の一手: 体にはリズムがあります。特に朝食後は、腸が最も活発に動く「排便のゴールデンタイム」です。食後にトイレに座る習慣をつける「トイレトレーニング」は非常に有効です。また、体の冷えは尿意を強くするため、保温を心がけましょう。

  • 「5. 服薬や体調」に課題がある場合

    • 次の一手: 降圧剤や痛み止め、精神系の薬など、普段飲んでいる薬が排泄に影響している可能性は少なくありません。気になる場合は、かかりつけ医や薬剤師に必ず相談してください。また、ストレスや不安は便秘や頻尿を悪化させます。安心して過ごせる環境づくりも大切なケアの一部です。

この問診票の目指すもの

この問診票の目的は、「おむつを当てるケア」から「トイレで排泄できる生活を支えるケア」へと視点を転換することです。一つひとつの生活習慣を見直すことで、ご本人のQOL(生活の質)向上と介護者の負担軽減の両方を目指すことができます。

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