「日常生活における困難さや努力の度合い」という視点に立った問診票と結果の解釈
この問診票は、単純な物忘れの頻度だけでなく、認知機能の低下を補うために本人がどれだけ苦労しているか、あるいはその変化をどう感じているかに焦点を当てた「本人の主観的な認知機能の変化」と、それによる「日常生活における困難さや努力の度合い」という視点に立った問診票を作成しました。
MCIに関する問診票(主観的な変化と努力の度合い)
ご自身の最近の感覚や、何かを行う際の心の負担について、最も近いものを選んでください。これは、物忘れの回数を数えるのではなく、ご自身の「感覚」を確かめるためのものです。
あなたご自身の「感覚」についての質問
| 質問項目 | 全く 問題ない | 少し 努力が 必要 | かなり 努力が 必要 | 以前はできたが 今は困難 |
| 1. 複数の用事をこなす 例:買い物をしながら、銀行に寄り、夕飯の献立を考えるなど、複数のことを同時に考える。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
| 2. 新しい機器の操作 例:新しいスマートフォンや家電の初期設定や使い方を覚える。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
| 3. 会話の要点を掴む 例:数人での会話や、少し複雑な話の流れを追い、理解する。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
| 4. 計画を立てて実行する 例:旅行の計画を立てる、複数の手続きを段取り良く進める。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
| 5. 集中力を維持する 例:本を読んだり、テレビ番組を見たりする際に、以前のように集中し続ける。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
| 6. 自分の考えを言葉にする 例:頭の中では分かっていることを、的確な言葉で相手に伝える。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
| 7. 変化への対応 例:突然の予定変更や、予期せぬ出来事に臨機応変に対応する。 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ |
結果の解釈と考え方
この問診票は、点数で判断するものではありません。注目すべきは、「以前と比べて、どの項目に努力が必要になったか」という点です。
「全く問題ない」がほとんどの場合
現時点では、ご自身の認知機能について特に心配する点はないかもしれません。引き続き、健康的な生活習慣を心がけましょう。
「少し努力が必要」がいくつかある場合
年齢と共に、誰にでも起こりうる変化かもしれません。しかし、これが「最近、急に増えてきた」と感じる場合は注意が必要です。知的活動や人との交流を楽しみ、脳を活性化させることを意識してみましょう。
「かなり努力が必要」や「今は困難」が1つでもある場合
もし、以前は当たり前にできていたことで、明らかに「困難さ」や「大きな精神的負担」を感じる項目があれば、それはMCIのサインかもしれません。
例えば、「新しい機器の操作」が難しくなるのは多くの人が経験しますが、もし「数人での会話についていくのが、かなり大変になった」と感じる場合、それは記憶力だけでなく、ワーキングメモリ(作業記憶)や注意力といった、より複雑な認知機能に変化が生じている可能性を示唆します。
この問診票のポイント
客観的な失敗ではなく、主観的な「大変さ」を問う問診であり、つまり、「財布をなくした」という事実だけでなく、「お金の管理に、以前よりずっと気を使わないといけなくなった」という内面的な負担感に焦点を当てます。
MCIの人が感じやすい困難を反映する問診であり、つまり、MCIの段階では、日常生活は自立しているものの、水面下では認知機能の低下を補うために、ご本人が大変な努力をしているケースが多くあります。この「隠れた努力」に光を当てるのが目的です。
次のステップ
いずれかの項目で「かなり努力が必要」「今は困難」と感じ、それがご自身の生活の質に影響している、あるいは強い不安を感じる場合は、ためらわずに専門の医療機関にご相談ください。ご自身の「感覚」は、専門家にとって非常に重要な情報となります。