理学療法士から見たフレールと認知症予防

1. フレイルと認知症の密接な関係:身体的フレイルから「コグニティブ・フレイル」へ

理学療法士が注目するのは、歩行速度の低下や筋力低下が、単なる身体の問題に留まらず、将来の認知機能低下の強力な予兆(シグナル)であるという点です。

  • コグニティブ・フレイル: 身体的フレイルと軽度認知障害(MCI)が併存した状態。

  • PTの視点: 「歩き方が変わった(小刻み、すり足)」「外出しなくなった」という身体の変化は、脳への刺激減少を意味し、認知症リスクを急上昇させます。


2. 在宅リハビリテーションにおける3つの柱

① 運動療法:低強度でも「継続」と「多要素」

在宅では、ジムのようなマシンは不要です。理学療法士は、その人の生活環境に合わせたプログラムを立案します。

  • 抗重力筋の維持: 立ち上がり動作の反復など、生活に直結する下肢筋力の維持。

  • 多要素運動(マルチコンポーネント): 有酸素運動、筋力トレーニング、バランス練習を組み合わせることが、認知症予防に最も効果的であるというエビデンスに基づきます。

② デュアルタスク(二重課題)の導入

「歩きながら計算する」「足踏みしながらしりとりをする」といった、身体運動と知的活動を同時に行うトレーニングです。

  • なぜ有効か: 前頭葉を活性化させ、日常生活での転倒リスク(例:話しかけられて立ち止まる、物を持って歩く)を軽減します。

③ 環境整備と社会的参加(LSAの拡大)

家の中だけで完結するリハビリには限界があります。

  • LSA(Life Space Assessment): 生活空間の広さを評価します。「寝室だけ」から「庭まで」、「近所のスーパーまで」と、物理的な移動距離を広げることが、社会交流を生み、脳への多大な刺激となります。

  • PTの役割: 手すりの設置や段差解消の提案により、「動きたくなる環境」をデザインします。


3. 家族・ケアマネジャーへのアドバイス

理学療法士は、単に「運動してください」と言うのではなく、「活動の質」を重視します。

項目具体的なアプローチ
栄養との連携運動だけでは筋肉はつきません。低栄養(特にタンパク質不足)がないか確認します。
口腔機能「噛む」「話す」は脳への刺激。口腔ケアがフレイル予防の入り口です。
役割の創出「洗濯物を畳む」「ゴミを出す」など、家事という名の「生活リハビリ」を推奨します。

結論

在宅におけるフレイル・認知症予防の本質は、「座っている時間を減らし、動く理由(役割)を作ること」に集約されます。理学療法士は、その方の身体機能の「限界」を見極めつつ、安全に「最大限の活動」を引き出す伴走者としての役割を担います。 

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