訪問看護師から見たフレールと認知症予防
訪問看護師の視点から見るフレイル・認知症予防は、リハビリ専門職や介護士とも異なり、「医学的リスク管理」と「生活の場における家族支援」の両輪で動くのが特徴です。
看護師は、本人の疾患管理(持病)と、それが生活にどう影響しているかを「医学的な目」で捉え、病状の悪化(急性増悪)によるフレイルの進行を食い止める「砦」となります。
1. 訪問看護師特有の視点:疾患とフレイルの悪循環を断つ
高齢者の多くは持病(高血圧、糖尿病、心疾患など)を抱えています。訪問看護師は、これらがフレイルや認知症を加速させないよう管理します。
低栄養と脱水の早期発見: 独居や高齢夫婦世帯では、食事が簡素になりがちです。看護師は血液データや皮膚の状態から低栄養を見抜き、フレイルの入り口である「体重減少」に歯止めをかけます。
ポリファーマシー(多剤併用)の調整: 薬の飲みすぎによるふらつき(転倒リスク)や、ボーッとする症状(仮性認知症)をチェックし、医師と連携して処方調整を提案します。
2. 訪問看護における予防戦略
① 急性増悪の予防(入院させないこと)
高齢者にとって、一度の入院はフレイルを劇的に進行させる最大のイベントです。
早期対応: 「少し元気がない」「呼吸が荒い」といった初期症状を捉えて処置することで、入院を回避し、生活リズムを維持します。これが結果として、廃用症候群(動かないことによる衰え)を防ぐ最強の認知症予防になります。
② セルフケア能力の維持・向上
看護師は「指導者」ではなく「並走者」として関わります。
バイタルチェックの習慣化: 本人が自分の血圧や体調に関心を持つよう促します。自分の体への関心(自己効力感)を維持することは、認知機能の低下を抑える心理的要因となります。
③ フットケアと清潔保持
理学療法士が「歩き方」を見るなら、看護師は「足そのもの」を見ます。
歩行の土台作り: 爪の変形や白癬(水虫)、タコなどのトラブルを処置することで、痛みをなくし、「歩きたくなる足」を作ります。
3. 「家族のレジリエンス(回復力)」へのアプローチ
在宅での予防は、本人だけでなくケアを担う家族のメンタルヘルスに左右されます。
介護負担の軽減: 家族が疲弊すると、本人は家の中に閉じ込められがちになります。看護師は家族の悩みを聞き、適切なサービス調整を提案することで、家庭内の「風通し」を良くし、本人が外部と接点を持てる環境を維持します。
看取りまで見据えた予防: 「ただ長生きする」のではなく、「どう生きたいか(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」を話し合うきっかけを作ります。目標があることは、生きる意欲=フレイル予防に直結します。
結論:3職種の役割比較
多職種が連携することで、在宅の予防は立体的になります。
| 職種 | 重点を置くポイント | 予防のキーワード |
| 理学療法士 | 身体構造・動作 | 「動ける体」を作る |
| 介護士 | 生活習慣・意欲 | 「豊かな生活」を支える |
| 訪問看護師 | 医学的管理・家族 | 「健康の基盤」を守る |
訪問看護師は、いわば在宅における「医療の司令塔」として、本人の病気と生活を繋ぎ合わせる役割を果たします。