訪問理学療法士・訪問介護・訪問看護師の3職種連携のコツ
在宅ケアにおいて、理学療法士(PT)、介護士、看護師はそれぞれ異なる「専門性の眼鏡」で利用者を見ています。この3者がバラバラに動くと、利用者は指示の板挟みにあい、混乱してしまいます。
これら3職種が「共通の目標」を作り上げ、効果的に連携するためのコツを、実務レベルの視点から論じます。
1. 職種間の「視点の違い」をマッピングする
共通目標を作る第一歩は、お互いの専門領域がどう重なっているかを理解することです。
PTからのインプット: 「この方は補助があれば30m歩けます。足の筋力は維持できています」
介護士からのインプット: 「夜中にトイレへ行く際、眠気でふらついて壁にぶつかりそうになっています」
看護師からのインプット: 「血圧の変動が激しく、朝方は低血圧によるめまいが起きやすいようです」
このように、「能力(PT)」「実際の生活(介護)」「リスク(看護)」を突き合わせることで、「単に歩く練習をする」のではなく、「朝の血圧が安定した時間帯に、見守りのもとでトイレまで歩く」という具体的で安全な共通目標が生まれます。
2. 連携をスムーズにする3つのコツ
① 専門用語を「生活動作」に翻訳する
PTが「下腿三頭筋の筋力が低下し、立位保持が不安定」と言っても、介護士には具体的な介助イメージが湧きません。
コツ: すべてを「ADL(日常生活動作)」の言葉に変換します。「ふくらはぎの力が弱いので、ズボンを履き替える時に後ろに転びやすいです。支える時は腰をしっかり持って」と伝えることで、全員が同じ介助を実践できます。
② ICTツールと「サービス担当者会議」の活用
在宅では全員が同時に顔を合わせる機会は稀です。
非同期の共有: チャットアプリや共有ノートを活用し、「今日、〇〇ができた!」という成功体験をリアルタイムで共有します。
多職種カンファレンス: ケアマネジャーを中心とした会議で、短期目標(1ヶ月後)と長期目標(半年後)を再確認します。ここで「本人の意向(何がしたいか)」を再確認し、目標のズレを修正します。
③ 「攻め」と「守り」の役割分担を明確にする
攻めのリハ(PT): 少し負荷をかけて機能を高める。
守りの看護(NS): 体調不良や過負荷による事故を防ぐ。
継続の介護(CW): 攻めと守りのバランスを日々の生活習慣に落とし込む。
このバランスを共有できていないと、「リハビリでは歩かせたいが、介護現場では危ないから車椅子に乗せる」という矛盾が生じます。
3. 共通目標の具体例:フレイル予防の場合
バラバラの視点を一つにまとめると、以下のような「一貫したケア」が可能になります。
| 職種 | 評価・アクション | 共通目標への貢献 |
| 訪問看護師 | 適切な水分摂取と排便コントロール、服薬管理 | 「動ける体調」のベースキャンプを作る |
| 訪問PT | 立ち上がり訓練、段差昇降の指導、福祉用具の選定 | 「動ける能力」の最大値を引き出す |
| 訪問介護 | 調理の同行、買い物への付き添い、意欲への働きかけ | 「動く機会」を日常の中に定着させる |
目標の例:「3ヶ月後、シルバーカーを使って近所の公園まで自分で歩いて行き、お茶を飲んで帰ってくる」
結論:連携の鍵は「利用者の物語」の共有
技術的な情報共有以上に大切なのは、「その方がどう生きたいか」というストーリーを共有することです。「昔は料理が好きだったから、もう一度台所に立たせてあげたい」という共通の想いがあれば、職種の壁を超えた強力なチームワークが生まれます。