症例79 認知症に伴い、排泄ケアが必要で困難な高齢者Bさん(85歳、要介護4)の事例
症例79 認知症に伴い、排泄ケアが必要で困難な高齢者Bさん(85歳、要介護4)の事例をもとに、以下の内容を含む支援計画書を作成してください。
Bさんは排泄のタイミングを自覚できず、家族の介助を頻繁に必要としています。家族介護者(配偶者)は高齢であり、介護負担が増大しています。
要件
- 短期的および長期的目標を設定すること。
- 初回アドバイス内容を記載すること。
- 社会資源を活用した具体的な支援内容を策定すること。
- SWOT分析およびクロスSWOT分析を通じて課題解決策を整理すること。
- **BSC(バランススコアカード)**形式で目標、指標、KPI、進捗状況、次のアクションを提示すること。
- 倫理的配慮や追加事項について言及すること。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- Bさんの排泄パターンを特定し、トイレ誘導のスケジュールを構築する。
- 家族がトイレ誘導方法を習得し、負担感を軽減する。
- 長期目標(6~12か月)
- 排泄習慣を確立し、失敗を1日1回以下に抑える。
- 家族の介護負担を軽減し、Bさんの在宅生活を維持する。
2. 初回アドバイス内容
- 状況アセスメント
- 排泄失敗の時間帯や原因を記録するための排泄日誌を作成。
- トイレ環境の安全性(手すり、段差解消)を確認。
- 環境調整
- 夜間のトイレ誘導用ライトの設置。
- ポータブルトイレの利用を検討。
- 介護技術の指導
- 家族にトイレ誘導時の適切な声掛けやタイミングを指導。
- 福祉用具の操作方法を説明。
3. 社会資源の活用
- 介護保険サービス 訪問介護、訪問看護、デイサービスの利用。
- 福祉用具貸与 ポータブルトイレ、排泄センサー、手すりの設置。
- 地域包括支援センター 家族介護者の相談窓口として活用。
- 市民活動団体 介護者支援グループへの参加促進。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
家族介護者の支援意欲が高い。 |
家族の高齢化と体力低下。 |
在宅介護を希望している。 |
トイレ誘導の負担が大きい。 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
介護保険サービスの利用可能性。 |
排泄失敗による皮膚炎のリスク。 |
福祉用具補助制度が充実。 |
夜間の転倒事故のリスク。 |
クロスSWOT分析
- S×O
家族の意欲を活かし、介護保険サービスを活用して介護負担を軽減。
- W×T
福祉用具の導入で安全性を向上し、事故リスクを軽減。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
排泄習慣の確立とトイレ誘導の成功率向上。 |
トイレ成功率80%以上。 |
現在60%で改善途中。 |
訪問介護による誘導練習の継続。 |
財務 |
コストを介護保険内に収める。 |
福祉用具利用費の管理。 |
貸与制度を活用中。 |
利用可能な補助金を再確認。 |
業務プロセス |
トイレ誘導の効率化。 |
誘導時間を15分以内に短縮。 |
20分程度で改善余地あり。 |
介護者への追加指導を実施。 |
学習と成長 |
家族介護者のスキル向上。 |
介護技術習得度のアンケート実施。 |
概ね理解しているが復習が必要。 |
定期的なフォローアップ研修の実施。 |
6. 倫理的配慮および追加事項
- 倫理的配慮
- 本人の尊厳を重視し、意思確認を徹底する。
- プライバシー保護のため記録の取り扱いを慎重に行う。
- 追加事項
- 在宅介護者のメンタルケアとして心理カウンセリングを提案。
- 地域包括ケアシステムの活用で支援の連携を強化。
解説
この支援計画は、短期的な目標を明確にし、長期的な視点を持つことで、Bさんと家族双方の生活の質を向上させることを目指しています。特にSWOT分析とBSCを組み合わせることで、課題の可視化と進捗管理を行いやすくしています。倫理的配慮は対象者の尊厳を守るための重要な要素であり、社会資源を有効活用することで、在宅介護者の負担を軽減することが期待されます。この計画を通じて、具体的かつ持続可能な排泄ケアが提供されることを目指します。