症例80 対象者Cさん(78歳、要介護5)は認知症が進行し、排泄コントロールが完全に失われています
症例80 対象者Cさん(78歳、要介護5)は認知症が進行し、排泄コントロールが完全に失われています。さらに、自宅内を徘徊することがあり、適切なタイミングでトイレ誘導が困難です。介護者(息子)は働きながら在宅介護を行っており、負担が大きくなっています。
症例要件
- 短期的および長期的目標を設定してください。
- 初回訪問時に提供するアドバイス内容を記載してください。
- 社会資源を活用した具体的な支援内容を示してください。
- SWOT分析およびクロスSWOT分析を通じて課題解決策を整理してください。
- BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明確にしてください。
- 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
- 作成した計画について解説を加えてください。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- Cさんの排泄パターンをモニタリングし、トイレ誘導スケジュールを確立する。
- 徘徊時の安全確保を目的に居住空間の環境調整を完了する。
- 長期目標(6~12か月)
- 福祉用具や支援サービスを活用し、家族の介護負担を30%軽減する。
- 排泄に伴う皮膚トラブル(褥瘡や感染症)の発生をゼロにする。
2. 初回アドバイス内容
- 観察開始
- 排泄失敗の時間帯、トリガー(食事後や特定の活動後など)を記録する日誌の導入。
- 環境調整
- トイレへのアクセス改善(ポータブルトイレの設置、動線確保)。
- 徘徊エリアの安全対策(障害物の除去、センサーライト設置)。
- 介護技術指導
- 介護者にトイレ誘導のタイミングや適切な声掛け方法を指導。
- 心理的支援
- 息子が利用できる介護者向け相談窓口やサポートグループを紹介。
3. 社会資源の活用
- 福祉用具貸与
- 排泄センサー、ポータブルトイレ、防水シート。
- 介護保険サービス
- 訪問介護、ショートステイ、訪問看護による皮膚ケア。
- 地域資源
- 地域包括支援センターの相談窓口。
- 認知症カフェや家族の交流イベントへの参加促進。
- 助成制度
- 住宅改修助成金を利用したバリアフリー化(手すりや段差解消)。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
- 家族が支援意欲を持っている。 |
- 認知症の進行による自力排泄の困難。 |
- 地域包括ケアの利用が可能。 |
- 家族の介護負担が限界に近い。 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
- 介護保険制度の活用。 |
- 徘徊による事故や転倒のリスク。 |
- 福祉用具や介護技術の進化。 |
- 排泄失敗による皮膚トラブル。 |
クロスSWOT分析
- S×O
家族の支援意欲を活かし、介護保険サービスを組み合わせて負担を軽減。
- W×T
徘徊や排泄トラブルに対応する福祉用具を活用し、安全性を向上。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
トイレ失敗の頻度を50%削減。 |
1日あたりの失敗回数を記録。 |
現在平均3回で記録継続中。 |
トイレ誘導計画を調整。 |
財務 |
費用を介護保険内で収める。 |
費用の月次確認。 |
福祉用具の活用で予算内を維持。 |
助成金申請の検討。 |
業務プロセス |
環境整備とトイレ誘導の効率化。 |
福祉用具設置状況と利用頻度を評価。 |
環境整備は完了。誘導時間が課題。 |
訪問介護サービスの利用を開始。 |
学習と成長 |
介護者のストレス軽減と知識向上。 |
介護者の満足度調査を実施。 |
精神的負担軽減は一部進展。 |
認知症ケアに関する家族研修の受講促進。 |
6. 倫理的配慮および追加事項
- 倫理的配慮
- Cさんの意思と尊厳を尊重し、過度な身体拘束を避ける。
- プライバシー保護(排泄データの適切な管理)。
- 追加事項
- 介護者のメンタルケアを目的とした定期カウンセリングの実施。
- 地域の認知症ケア専門家との連携強化。
解説
SWOT分析では課題を明確化し、クロスSWOT分析により具体的な解決策を示しました。BSC形式では目標、指標、進捗状況、次のアクションを一元管理することで、継続的な評価と調整を可能にしています。倫理的配慮と社会資源の活用は、当事者と介護者の安心感を確保するうえで重要です。この計画をもとに、Cさんと介護者が安心して暮らせる環境が整うことが期待されます。