新たなる第一歩を支援 ~科学的根拠で政策やケアを考え効果を確認~
新たなる第一歩を支援 ~科学的根拠で政策やケアを考え効果を確認~
EBPCMとは、Evidence
Based Policy and Care Making(証拠に基づく政策やケアの立案)の取り組みが推進されて、国はもちろん各種団体においても、統計データの利活用が注目されています。
•国民が抱えている現状、政策やケアの課題をすばやく的確に把握したい
•有効な対応策やケアを選び、その効果を科学的に検証したい
•しかし、どのように取り組みを進めればいいか、わからない
私ども排泄ケア総合研究所は、これまでの優れた実例や、専門家からのアドバイス、役立つツールなどの情報を発信し、各種団体で実際に政策づくりや新しいケアの企画に携わり、課題を抱える皆様を支援すべく、具体的な情報を集め、そしてアイデアを掲載しました。ぜひご活用ください。
「ビールと紙おむつは一緒に買われる?」の疑問を深掘り
人口動態や介護、医療、格差、消費など様々な社会を映し出すクエタバイト(QB:1030単位)を超えるビッグデータについて複雑に、間接的に影響し合っているそれぞれのデータの関係性をAIが解析することができます。つまり、超大量データを集めて相互の関係性をコンピュータで計測するという試みは、既に広く行われています。先ずは話題提供として、都市伝説的な事例紹介から始めます。
あるスーパーの売上を分析したところ「ビールが売れるとき、紙おむつも売れることがわかった」というものです。この事例を最初に紹介したのは、1992年12月23日付「ウォールストリートジャーナル」掲載の「Super Computer Manage Holiday Stock」という記事だったといわれています。
アメリカ中西部の小売ストア・チェーン Osco Drugs は、25店舗のキャッシュレジスターのデータを分析したところ、「顧客がビールと紙おむつを一緒に購入する傾向がある」という事象を発見した、というお話です。
ビールと紙おむつという意外な商品同士の同時購買ですが、相関関係があることから、おむつ売り場の近くにビールを配置するように並べて陳列する店舗レイアウトにしたところ、両方の製品の売上が伸びたとされています。
その背景には「アメリカのスーパーマーケットで、ビールを買いに来た夫が、妻から依頼されてベビー用の紙おむつをついでに買っていくから」という理由があるといわれています。「ビール」と「おむつ」のように、一見すると関連性がない商品同士からユーザーの併売行動を発見するバスケット分析の重要性を語る上で、好事例として良く引用されます。
スーパーで扱う全品目について「ビールの売上と連動する品は?」一つひとつ調べていくと一緒に売れる可能性が高いのは「ビールのつまみ」や「暑いからアイス」と人間にありがちな先入観で仮説を立てて検証します。ところがコンピュータは、先入観の壁がないことで、「紙おむつ」という一見意外なアイテムを指摘したというわけです。
紙おむつとビールの売上は相関関係があったとのことですが、相関関係とは、2つの事柄が関わり合う関係のことです。特に統計学では一方の数値が増加すると、もう一方の数値が減少または増加する関係のことをいいます。例えば、雨が降れば、その地域の川の水量は増加します。このように一方が増えると、もう一方も増える状態を正の相関関係といいます。逆に、地球全体の気温が上がれば、北極や南極の氷の量は減ります。このように一方が増えるともう一方が減少する状態を負の相関関係といいます。また、高齢者の運動量と体力の関係は、運動量が増えると体力も増えるが、体力が減ると運動量も減る傾向があります。さらに、高齢者の自宅の滞在時間と体力の関係も自宅の滞在時間が増えると体力が減り、体力が増えれば外出の機会が増えるため自宅の滞在時間が減る傾向があります。
相関関係は、一方が増えることでもう一方が増加または減少する状態を指すだけであり、それだけで2つの事象に因果関係があると判断できるものではありません。因果関係を証明するには、相関関係を示した上で、後述する別の方法で因果を証明する必要があります。
因果関係のあるものには相関関係がありますが、相関関係は必ずしも因果関係とはならないことを頭に入れておきましょう。また、因果関係は「ある/ない」と表現されることが多いのですが、相関関係の場合は「強い/弱い/ない」と表現されることが多いのです。