症例86 象者Bさんは75歳男性、要介護5で、病歴は重度の認知症、脳梗塞後遺症(右半身麻痺)、尿失禁

症例86 象者Bさんは75歳男性、要介護5で、病歴は重度の認知症、脳梗塞後遺症(右半身麻痺)、尿失禁

  • 環境  自宅(バリアフリー住宅)。同居家族は無く、息子が月に数回訪問、他は近隣の友人が支援。
  • 課題  Bさんは認知症により排泄のタイミングや感覚の認識が困難。息子の訪問頻度が少なく、地域のサポートも十分でない。排泄介助が求められるが、介護者の負担が大きくなり、地域資源の活用が遅れている。
  • 社会的背景  一人暮らしで孤立しており、地域の高齢者支援活動には参加していない。

症例要件

  1. 短期的および長期的目標を設定してください。
  2. 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
  3. 社会資源の活用について具体的に提案してください。
  4. 詳細なSWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
  5. BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
  6. 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
  7. 作成した計画について解説を加えてください。

 解答例

1. 短期的および長期的目標

  • 短期目標(13か月)
    • 介護者の負担を軽減するため、訪問介護サービス(週2回)を導入する。
    • 地域包括支援センターを通じて、介護者支援サービス(カウンセリング、リフレッシュ支援)を提案。
    • Bさんの排泄習慣に合わせて、トイレ誘導を定期的に行う(時間帯設定、ポータブルトイレ導入)。
    • Bさんの認知症進行を防ぐため、定期的な社会参加(地域活動やデイサービス)を支援。
  • 長期目標(612か月)
    • Bさんの排泄ケアの自立を促進するため、認知症リハビリテーションを導入し、認識力向上を目指す。
    • 地域資源(デイサービス、地域ボランティア)を活用し、介護負担を大幅に軽減。
    • 介護者(息子)の負担を減らし、地域のサポート体制を強化するため、地域ネットワークを構築。

2. 初期アドバイス内容

  1. 排泄ケアの基本的指導
    • Bさんの排泄のタイミングを予測し、毎日の定期的なトイレ誘導を行うことを提案。
    • ポータブルトイレの導入を検討し、トイレまでの移動をサポートする手すりなどの福祉用具を使用。
    • 介護者(息子)に対して、Bさんの排泄のサインを見逃さないよう指導し、認知症の進行に応じたケアを提供。
  2. 地域資源の活用
    • 訪問介護サービスを導入し、排泄ケアの負担を軽減。
    • 地域包括支援センターを活用し、介護者への支援(相談、リフレッシュサービス)を提案。
    • 近隣の高齢者福祉活動への参加を促進し、社会的孤立の防止を図る。
    • デイサービスへの参加を勧め、Bさんの社会的交流を促す。

3. 社会資源の活用

  • 訪問介護サービス
    • 2回の訪問介護サービスを導入し、Bさんの排泄介助を専門スタッフに依頼。
  • デイサービス
    • Bさんが社会参加を維持できるよう、週3回のデイサービスを提案。
  • 地域包括支援センター
    • 介護者への支援プログラムを提案し、介護者の負担軽減を図る。
  • 地域ボランティア
    • 地域の高齢者支援活動に参加することで、Bさんの社会的孤立を防ぐ。

4. SWOT分析

強み(Strengths

弱み(Weaknesses

- Bさんの住居はバリアフリーで安全。

- 認知症の進行により排泄の感覚が不明瞭。

- 地域の支援ネットワークが整備されつつある。

- 孤立しているため、支援が限られている。

 

機会(Opportunities

脅威(Threats

- 介護者支援サービスの充実。

- 介護者の負担が限界に達する可能性。

- 高齢者福祉活動や地域活動の増加。

- Bさんの認知症が進行し、排泄ケアが困難になる。

クロスSWOT分析(詳細)

  • S×O  地域支援ネットワークを活用し、Bさんの社会参加を促進する。
  • W×O  地域包括支援センターを通じて介護者支援サービスを活用し、息子の負担を軽減。
  • S×T  Bさんの自宅がバリアフリーのため、排泄介助に関するリスクを減らす。
  • W×T  孤立しているBさんの認知症進行を防ぐため、地域活動への参加を促進し、社会的サポートを強化する。

5. BSC形式

視点

目標

指標(KPI

進捗状況

次のアクション

顧客(利用者)

Bさんの排泄ケアを安定化。

排泄失敗回数(月別記録)。

初期段階では失敗回数が減少。

定期的なトイレ誘導で改善継続。

財務

福祉用具費用を効率的に活用。

月間福祉用具利用料(削減額)。

ポータブルトイレ、手すりが導入され、利用開始。

高額な医療費負担軽減のための助成金申請。

業務プロセス

介護者支援を強化。

介護者の満足度評価(アンケート結果)。

サポートグループ利用を開始。

定期的な介護者相談支援を提供。

学習と成長

介護者とBさん双方の健康を保つ。

介護者の心身健康度(主観評価スケール)。

介護者のストレス軽減を目指したリフレッシュプログラム導入。

リフレッシュプログラムの定期利用。


6. 倫理的配慮および追加事項

  • 倫理的配慮
    • Bさんの自主性を尊重し、選択肢を提供したケアを実施。
    • 介護者(息子)の意向を確認し、過剰な負担がかからないよう支援。
  • 追加事項
    • 介護者とBさん双方の心身の健康を守るため、定期的な評価を行い、ケアの改善を図る。

7. 解説

この支援計画は、Bさんの排泄ケアのニーズに基づいて、短期的および長期的な目標を設定しています。社会資源を効果的に活用することにより、介護者の負担を軽減し、Bさんの生活の質を向上させることを目指しています。SWOT分析とクロスSWOT分析を通じて、リスクと機会を見極め、実行可能なアクションを提案しました。また、BSCを使用することで、目標達成の進捗を管理し、適切な支援が行われているかを評価することができます。 

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