症例83 対象者Fさんは、82歳女性、要介護4で、認知症(アルツハイマー型)を患い、排泄において昼夜を問わず失敗が多い状況
症例83 対象者Fさんは、82歳女性、要介護4で、認知症(アルツハイマー型)を患い、排泄において昼夜を問わず失敗が多い状況。失禁ケアと用具(おむつ、パッド)の適切な利用が課題となっている。
- 家族状況 娘(50歳、独身)が介護の主担当。パート勤務で経済的にも余裕がないため、追加費用の負担が難しい。
- 福祉的課題 経済的困難、地域社会からの孤立、福祉サービスや制度の未利用(介護保険外の助成金や地域の排泄ケア支援プログラムなど)。
- 環境 古い一戸建て住宅でトイレのバリアフリー化が不十分。介護負担が高く、娘の身体的・精神的疲労が蓄積。
症例要件
- 短期的および長期的目標を設定してください。
- 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
- 社会資源を活用した具体的支援内容を挿入してください。
- 詳細なSWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
- BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
- 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
- 作成した計画について解説を加えてください。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- おむつやパッドの適切な選定・使用方法を確立。
- トイレ環境の簡易的な改善(手すり設置、照明改善)。
- 娘の介護負担を軽減するための外部サービス(デイサービス)の導入。
- 長期目標(6~12か月)
- 排泄失敗の頻度を半減し、Fさんの尊厳を保つ生活を支援。
- 介護費用を抑えつつ、必要な用具・サービスの継続利用を可能にする。
- 娘の生活の質(勤務継続、健康維持)を向上させる。
2. 初期アドバイス内容
- 用具選定の指導
- 失禁ケア用具(吸水性の高いおむつ、パッド)を、介護用具専門店や訪問看護師と連携して選定。
- トイレ環境の簡易改善
- 福祉用具レンタルを活用し、トイレ手すりや昇降便座を設置。
- 夜間照明を改善し、視認性を向上させる。
- 経済的支援の相談
- 介護保険外の助成金(自治体補助)や社会福祉協議会の貸付制度を提案。
- 娘のメンタルケア
- ケアマネジャーや相談員による定期面談の設定。
3. 社会資源の活用
- 地域包括支援センター
- 排泄ケア教室や福祉用具の無料相談会を紹介。
- 介護保険サービス
- デイサービス利用による介護負担軽減とFさんの活動性向上。
- 非営利団体(NPO)
- 無償または低料金で提供される排泄ケア用具の提供プログラムを活用。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
- 地域包括支援センターへのアクセス |
- 経済的な余裕がない |
- 介護保険サービスが適用可能 |
- 娘の身体的・精神的疲労が蓄積 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
- 助成金や地域支援プログラムの活用 |
- 娘の介護疲労による健康リスク |
- 地域のNPO支援の拡大 |
- 介護放棄や社会的孤立の可能性 |
クロスSWOT分析(詳細)
- S×O
福祉用具や地域支援を通じて負担を軽減。
- W×O
経済的支援を活用し、費用面の不安を軽減。
- S×T
地域包括センターを拠点にした緊急時対応策を構築。
- W×T
娘の健康維持を目的とした短期リリーフケアの導入。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
Fさんの失禁頻度を減少。 |
夜間の失禁回数の記録。 |
減少傾向が見られる。 |
パッド選択の見直しを検討。 |
財務 |
用具費用を抑えつつ支援を継続。 |
月間の排泄ケア用具費用。 |
補助金申請により一部軽減済み。 |
助成金プログラムの追加申請を検討。 |
業務プロセス |
用具とトイレ環境を最適化。 |
トイレ使用回数の増加。 |
トイレ利用率が向上。 |
次段階の環境改善を計画。 |
学習と成長 |
娘のケアスキルを向上。 |
ケア手順の正確性をチェックリストで評価。 |
手順の理解度は高いが精神的負担あり。 |
定期的な息抜き機会を計画。 |
6. 倫理的配慮および追加事項
- 倫理的配慮
- Fさんの意思を尊重し、尊厳を維持するケアを提供。
- 娘の負担を軽減しつつ、主体的な判断を尊重。
- 追加事項
- 夜間の緊急対応策として、緊急通報装置の利用を提案。
- 定期的なフォローアップミーティングを導入し、計画の適合性を確認。
解説
福祉的観点を重視した支援計画は、社会資源を最大限に活用しつつ、経済的な負担を軽減することを目的としています。SWOTおよびクロスSWOT分析を活用して課題を多角的に検討し、具体的な解決策を提示しました。BSCの導入により、進捗状況を可視化し、次のアクションに繋げることができます。倫理的配慮を中心に据えたアプローチにより、利用者と介護者双方の満足度を高めることが期待されます。