症例89 対象者Dさんは75歳女性で要介護3、病歴は糖尿病、軽度の認知症、高血圧
症例89 対象者Dさんは75歳女性で要介護3、病歴は糖尿病、軽度の認知症、高血圧。
- 環境 自宅(簡易的なバリアフリー設備あり)、配偶者(78歳)と同居。
- 課題 Dさんは排泄に関して自立できておらず、頻繁に失禁や排泄失敗が発生。認知症が進行し、トイレの場所を忘れることが増えている。Dさんの排泄に関するニーズに応じたケアが必要であり、また経済的な負担が大きいため、行政からの支援が求められる。
- 課題 排泄ケアを適切に提供するためには、在宅での支援体制強化と行政支援の連携が求められる。
症例要件
- 短期的および長期的目標を設定してください。
- 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
- 社会資源の活用について具体的に提案してください。
- 詳細なSWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
- BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- 週3回の訪問看護を実施し、排泄ケアのサポート。
- Dさんのトイレ誘導を行い、失禁を減らすためにケアのタイミングを調整。
- 介護者に対して、排泄ケアや認知症に配慮したトイレの使い方について教育を行う。
- 排泄用具(介護用おむつ、ポータブルトイレ)の利用を推奨。
- 長期目標(6~12か月)
- Dさんのトイレ自立を促進し、失禁の回数を月3回以下に減少。
- 介護者の負担を軽減するため、訪問看護の回数を調整し、社会資源を有効活用する。
- 介護者が介護方法を習得し、排泄ケアの自立支援が可能になる。
- 排泄ケアに必要な福祉用具を整備し、生活環境を改善する。
2. 初期アドバイス内容
- 排泄ケアに関する指導
- 失禁や排泄失敗を減らすために、トイレ誘導を行い、30分~1時間ごとのトイレ誘導を実施。
- 排泄後のケアとして、おむつ交換や皮膚の清潔を維持する方法を伝える。
- トイレの場所や利用方法について、Dさんが認識しやすい方法でサポート。
- 社会資源の活用
- 介護保険サービス 訪問看護、福祉用具貸与サービスを利用し、支援を提供。
- 地域包括支援センター 地域の介護サポートや福祉サービス、制度の活用を提案。
- 経済的支援 生活保護や介護費用の助成金を活用し、Dさんと介護者の経済的負担を軽減。
- 介護者の支援 介護者への教育や情報提供を通じて、排泄ケアの負担を軽減。
3. 社会資源の活用
- 訪問看護サービス
- 訪問看護師による排泄ケアサポート(週3回)。トイレ誘導や介護用具の調整。
- 介護保険を利用して、訪問看護とデイサービスの活用を検討。
- 福祉用具の活用
- ポータブルトイレや介護用おむつ、吸引機器など、必要な福祉用具を借りる。
- トイレまでの移動に支障がある場合、手すりやスロープの設置を地域包括支援センターと調整。
- 経済的支援
- 生活保護や介護保険の助成金を通じて、経済的負担を軽減。
- 介護費用の支援策を活用し、サービスをより多く提供する。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
- 介護保険や福祉用具の利用可能。 |
- 認知症によるトイレの認識の欠如。 |
- 訪問看護や地域包括支援センターが利用できる。 |
- 高齢の介護者による体力的な限界。 |
- 地域の福祉サービスが活用できる。 |
- 排泄ケアに対する知識不足。 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
- 地域包括支援センターとの連携強化。 |
- Dさんの病状進行によるケアの負担増加。 |
- 介護保険のさらなる活用。 |
- 経済的な問題でサービス利用の制限。 |
- 社会資源の活用により経済的負担の軽減。 |
- 介護者の健康状態の悪化による負担増。 |
クロスSWOT分析
- S×O
訪問看護サービスと地域包括支援センターの活用を通じて、Dさんの排泄ケアを改善。
- W×O
介護者が体力的に難しい場合、地域包括支援センターのサービスや福祉用具を積極的に利用。
- S×T
介護保険サービスを最大限に活用し、Dさんの病状進行に対応。
- W×T
経済的支援や福祉用具の提供が遅れると、Dさんや介護者の負担が増大。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
Dさんの排泄ケアの改善。 |
失禁の回数(月別記録)。 |
失禁が減少し、排泄ケアが安定している。 |
訪問看護の回数を調整し、ケアを強化。 |
財務 |
経済的負担の軽減。 |
介護費用助成金、生活保護申請の進捗状況。 |
生活保護申請が完了し、福祉用具が整備。 |
介護費用の申請を通過し、支援強化。 |
業務プロセス |
訪問看護サービスの効率化。 |
看護師訪問回数、ケアの効率性。 |
訪問回数が増え、ケアが確実に提供されている。 |
看護師とケアプランの調整。 |
学習と成長 |
介護者と支援者の知識向上。 |
介護者教育時間、トレーニング実施回数。 |
介護者がケア方法を学び、負担が軽減している。 |
定期的な教育を実施し、情報提供を強化。 |
倫理的配慮
- プライバシーの保護 介護に関する個人情報は厳密に管理し、関係者以外には開示しない。
- 公平性の確保 すべての支援を公平に提供し、経済的な差異や障害の有無によってサービスに差が出ないようにする。
- 介護者の負担軽減 介護者の意見を尊重し、無理な支援を強制しない。介護者の健康を最優先に考える。
解説
この支援計画は、排泄ケアに特化した困難事例に対し、行政と連携して課題解決を図るものです。初期アドバイスには、実際的なケア方法や社会資源の活用を挿入し、経済的な負担を軽減する提案を行います。SWOT分析とBSCを通じて、目標達成に向けた進捗管理を行い、段階的に目標を達成するための具体的なアクションを計画しています。