症例81 75歳男性、要介護4で進行性のパーキンソン病による運動機能低下、および認知症の併発により、排泄コントロールが困難

症例81  対象者Dさん(75歳男性、要介護4

  • 主な症状  進行性のパーキンソン病による運動機能低下、および認知症の併発により、排泄コントロールが困難。トイレ誘導に抵抗を示し、失禁が頻発している。
  • 家庭状況  配偶者(73歳)が主介護者であるが、配偶者自身も持病(高血圧・軽度の変形性関節症)を抱えており、負担が増大している。
  • 環境  自宅は古い構造でバリアフリー化が進んでおらず、トイレの位置が使いづらい。
  • 現状課題  排泄に伴う皮膚炎や感染症が発生し、夜間頻尿が介護者の睡眠不足を引き起こしている。

症例要件

  1. 短期的および長期的目標を設定してください。
  2. 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
  3. 社会資源を活用した具体的支援内容を挿入してください。
  4. SWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
  5. BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
  6. 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
  7. 作成した計画について解説を加えてください。

 解答例

1. 短期的および長期的目標

  • 短期目標(13か月)
    • 排泄パターンの記録を開始し、適切なトイレ誘導時間を特定する。
    • 配偶者の介護負担を軽減するため、訪問介護の導入を実現する。
    • 排泄失敗に伴う皮膚炎の改善を目指す。
  • 長期目標(612か月)
    • 排泄コントロールの改善を図り、失禁の頻度を30%減少させる。
    • 夜間の排泄対応を改善し、介護者の睡眠時間を1時間以上確保する。
    • 住環境の改修を進め、トイレへのアクセスを向上させる。

2. 初期アドバイス内容

  1. 排泄記録の開始
    • 1週間分の排泄パターンを記録する簡易フォームを提案。
  2. 皮膚トラブルの予防とケア
    • 排泄後の迅速なケアを促進するため、防水シートや洗浄用具の活用を指導。
  3. 介護負担軽減策
    • 配偶者が利用可能なレスパイトケア(ショートステイ)の説明。
    • 夜間用吸収パッドやおむつの使用を提案し、失禁対応の効率化を図る。
  4. 心理的支援
    • 配偶者向けの介護相談窓口とサポートグループを紹介し、孤立感の軽減を目指す。

3. 社会資源の活用

  • 福祉用具
    • トイレへの移動をサポートする歩行補助具や手すりを設置。
    • 防水マットレス、吸収力の高いおむつ、尿とりパッドを活用。
  • 介護保険サービス
    • 訪問介護による入浴介助・排泄ケア。
    • 夜間対応可能なヘルパー派遣サービスの利用。
  • 地域資源
    • 地域包括支援センターで住環境改修助成金を申請し、トイレのリフォームを計画。

4. SWOT分析

強み(Strengths

弱み(Weaknesses

- 配偶者が介護に積極的。

- トイレの構造が不便である。

- 介護保険制度が利用可能。

- 配偶者の健康問題がある。

 

機会(Opportunities

脅威(Threats

- 福祉用具の進化と導入可能性。

- 感染症や皮膚トラブルの悪化。

- 地域包括ケアの活用。

- 配偶者の介護負担増加による離脱リスク。

クロスSWOT分析

  • S×O  配偶者の意欲を活かし、福祉用具の導入を進めて介護効率を向上。
  • W×T  トイレ環境の改善と訪問介護の活用で健康リスクを軽減。

5. BSC形式

視点

目標

指標(KPI

進捗状況

次のアクション

顧客(利用者)

排泄失敗の頻度を20%削減。

週ごとの失敗回数を記録する。

1日平均4→3.5回。記録継続中。

記録を分析し、誘導時間を修正。

財務

費用を予算内に抑える。

介護用品費用の月次確認。

現在は福祉用具貸与を利用中。

助成金申請を進める。

業務プロセス

環境改修を完了しトイレ誘導を改善。

トイレ改修工事の進捗。

手すりの設置完了。次は段差解消。

地域包括ケアへ改修報告。

学習と成長

配偶者の介護知識を向上。

ケア方法に関するアンケート。

1回目の相談会参加済み。

次回ケアマネージャー訪問を設定。


6. 倫理的配慮および追加事項

  • 倫理的配慮
    • 当事者Dさんの意思確認を可能な範囲で行い、尊厳を守る。
    • 配偶者の負担軽減を目的としながら、家族間の協力関係を強化する。
  • 追加事項
    • 緊急時対応策(夜間ヘルプコールや通報システム)を整備する。
    • 定期的なモニタリングを通じて計画を柔軟に更新する。

解説

この計画は、Dさんの排泄ケアにおける新たな視点を考慮し、身体的・精神的負担を軽減しながら、在宅介護の継続を目指しています。SWOT分析では課題を明確化し、クロスSWOT分析を通じて戦略的に対応策を立案しました。BSC形式では、具体的な進捗管理が可能であり、次のステップが明確です。倫理的配慮と社会資源の活用により、Dさんと配偶者の生活の質が向上することを期待しています。 

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