症例82 対象者Eさん 68歳男性、要介護5で多系統萎縮症(MSA)に伴う重度の自律神経障害、運動失調、尿閉・便秘
症例82 対象者Eさん 68歳男性、要介護5で多系統萎縮症(MSA)に伴う重度の自律神経障害、運動失調、尿閉・便秘。留置カテーテルが常設されているが、カテーテル閉塞や尿路感染が頻発している。
- 家庭状況 妻(65歳)が主介護者だが、介護負担が過剰でメンタルヘルスに問題が出始めている。子供は遠方に居住し、サポートが限定的。
- 医療的課題 尿路感染の予防、便秘管理、医療機器(留置カテーテル)の適切な管理。
- 環境 賃貸マンションで医療機器設置スペースが限られている。
- 現状課題 医療的ケアに対する介護者の不安、慢性的な疲労、医療と介護サービスの調整不足。
症例要件
- 短期的および長期的目標を設定してください。
- 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
- 社会資源を活用した具体的支援内容を挿入してください。
- SWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
- BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
- 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
- 作成した計画について解説を加えてください。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- カテーテル管理を改善し、感染頻度を月1回以下に抑える。
- 排便スケジュールを確立し、便秘エピソードを減少させる。
- 介護者の不安を軽減するため、訪問看護を導入する。
- 長期目標(6~12か月)
- 感染リスクを最小化し、Eさんの全体的な生活の質を向上させる。
- 妻の介護負担を軽減し、メンタルヘルス状態を安定させる。
- 医療と介護サービスの統合的なケアプランを構築する。
2. 初期アドバイス内容
- カテーテル管理
- 留置カテーテルの適切な洗浄方法と交換頻度について、妻に具体的な指導を行う。
- 尿路感染の初期兆候(発熱、濁り、匂い)を説明し、早期対応を促進する。
- 排便管理
- 医師や薬剤師と連携して、下剤使用や食事指導(食物繊維・水分摂取)を計画。
- 排便記録を開始し、排便パターンを把握する。
- 心理的支援
- 妻に対し、相談窓口(医療ソーシャルワーカー)を紹介。孤立感を和らげる支援を提案。
- 訪問看護導入
- 専門的なケアを提供し、妻が抱える医療的な不安を軽減する。
3. 社会資源の活用
- 訪問看護サービス
- カテーテル交換や感染兆候のモニタリングを実施。
- 地域包括ケア
- 福祉用具の提供(移乗用リフト、ベッド)および住環境改修助成。
- 医療連携
- 医療機関と定期的な情報共有を行い、薬剤調整や機器管理の最適化を図る。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
- 訪問看護や地域ケアへのアクセス。 |
- 妻の健康状態が不安定。 |
- 医療機関との継続的な連携。 |
- 賃貸住宅で設備制限あり。 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
- 社会資源を活用した支援。 |
- 尿路感染症や便秘の悪化リスク。 |
- 医療技術の進展。 |
- 妻の介護負担によるバーンアウト。 |
クロスSWOT分析
- S×O
訪問看護と福祉用具を活用し、妻の負担を軽減。
- W×T
賃貸住宅の制約を考慮した簡易的な介護環境改善策を導入。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
感染リスクを減少させる。 |
尿路感染エピソードの頻度。 |
感染回数が月2回→1回に減少。 |
記録データを分析し、追加改善を検討。 |
財務 |
支援コストを予算内に収める。 |
医療費・介護用品費用のモニタリング。 |
予算内で管理中。 |
支援金の申請。 |
業務プロセス |
カテーテル管理のプロセスを確立。 |
カテーテル交換記録の正確性。 |
看護師による訪問開始済み。 |
訪問頻度を増やす検討。 |
学習と成長 |
妻の医療ケアスキルを向上させる。 |
ケア手順に関するチェックリスト。 |
初回トレーニング完了。 |
定期フォローアップの計画。 |
6. 倫理的配慮および追加事項
- 倫理的配慮
- Eさんの意思を確認し、尊厳あるケアを優先。
- 妻の限界を尊重し、介護からの解放機会を提供。
- 追加事項
- 緊急時対応策として、夜間緊急ヘルプサービスを登録。
- 定期的に支援計画を見直し、状況の変化に対応する柔軟性を確保。
解説
この支援計画は、Eさんの医療的ニーズを中心に、妻の介護負担を軽減しながら双方の生活の質を向上させることを目的としています。医療的視点と介護的視点を統合し、訪問看護や社会資源の有効活用を強調しました。BSC形式を用いることで進捗管理が容易になり、SWOT分析から得られた洞察を戦略的に計画に反映させています。倫理的配慮も含め、実践可能な包括的支援策を提供するアプローチです。