症例85 象者Aさんは82歳男性、要介護4で、高血圧、糖尿病、アルツハイマー型認知症。歩行困難、認知症による排泄の感覚低下の既往あり。
症例85 象者Aさんは82歳男性、要介護4で、高血圧、糖尿病、アルツハイマー型認知症。歩行困難、認知症による排泄の感覚低下の既往あり。
- 環境 在宅生活、家族との同居。トイレは広めだが、補助設備がないため排泄時に転倒のリスクあり。
- 介護者 妻(80歳、軽度の認知症)。日常の介護負担が増大し、睡眠不足や身体的負担が見られる。
- 課題 Aさんは排泄を自分で認識できないため、介護者によるサポートが常に必要。排泄のタイミングや方法を家庭内で調整することが困難。介護者の負担増加により、介護の質が低下しつつある。
症例要件
- 短期的および長期的目標を設定してください。
- 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
- 社会資源の活用について具体的に提案してください。
- 詳細なSWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
- BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
- 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
- 作成した計画について解説を加えてください。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- 介護者への排泄ケア指導(トイレ介助方法やタイミングの見極め)を行い、負担軽減を図る。
- ポータブルトイレまたは介護用補助具の導入を行い、転倒リスクを軽減する。
- 家族が相談できる訪問介護サービスや地域支援を開始する。
- 長期目標(6~12か月)
- Aさんの排泄の自立を促進するため、排泄の予兆を感じ取る訓練を行う。
- 介護者の心身の健康を保つため、定期的なリフレッシュ支援を提供する。
- 介護負担を減らし、地域資源(デイサービス、訪問介護)をフル活用することで、長期的な安定を確保する。
2. 初期アドバイス内容
- 排泄ケアの基本的指導
- Aさんの排泄習慣に合わせて、予測可能なタイミングでの排泄介助(定期的なトイレ誘導)を推奨。
- トイレでの転倒リスクを減らすために、ポータブルトイレやトイレの補助具(手すりなど)を導入。
- 介護者が心身ともに負担を感じているため、介護者向けのリラックス法やストレス管理法をアドバイス。
- 地域資源の活用
- 訪問介護サービス(週2回)を導入し、Aさんの介護負担を軽減。
- 地域包括支援センターを通じて、デイサービスや介護者支援プログラムを活用。
- 介護者のためのサポートグループやカウンセリングを提案。
3. 社会資源の活用
- 訪問介護サービス
- 介護者の負担軽減を目的とし、週に2回の訪問介護を導入(排泄介助、日常生活支援)。
- デイサービス
- Aさんの社会的孤立を防ぎ、認知症の進行を防ぐために週3回のデイサービスを提案。
- 地域包括支援センター
- 介護者支援プログラム、相談窓口を利用し、介護者のストレス軽減を図る。
- 福祉用具貸与
- ポータブルトイレ、介護用手すりなどの導入を支援。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
- Aさんの排泄習慣に一定のパターンがある。 |
- 介護者の身体的・精神的負担が大きい。 |
- 地域資源(訪問介護、デイサービス)が利用可能。 |
- Aさんの認知症による排泄認識の低下。 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
- 地域支援サービスの拡充。 |
- 介護者の健康状態の悪化。 |
- 介護者のリフレッシュ支援の利用。 |
- Aさんの排泄の自立化が進まない場合、ケア負担が増加。 |
クロスSWOT分析(詳細)
- S×O
Aさんの排泄習慣を活かし、地域資源(訪問介護、デイサービス)を活用して安定的なケアを提供。
- W×O
介護者支援プログラムを活用し、介護者の身体的・精神的負担を軽減する。
- S×T
Aさんの排泄認識の低下に対して、福祉用具(手すり、ポータブルトイレ)を導入し、ケアの質を確保。
- W×T
介護者の健康管理をサポートし、ストレスを軽減するために、介護者への定期的なケア支援を提案。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
Aさんの排泄ケアを安定化。 |
排泄失敗回数(月別記録)。 |
初期段階では失敗回数が減少。 |
定期的なトイレ誘導で改善継続。 |
財務 |
福祉用具費用を効率的に活用。 |
月間福祉用具利用料(削減額)。 |
ポータブルトイレ、手すりが導入され、利用開始。 |
高額な医療費負担軽減のための助成金申請。 |
業務プロセス |
介護者支援を強化。 |
介護者の満足度評価(アンケート結果)。 |
サポートグループ利用を開始。 |
定期的な介護者相談支援を提供。 |
学習と成長 |
介護者とAさん双方の健康を保つ。 |
介護者の心身健康度(主観評価スケール)。 |
介護者のストレス軽減を目指したリフレッシュプログラム導入。 |
リフレッシュプログラムの定期利用。 |
6. 倫理的配慮および追加事項
- 倫理的配慮
- Aさんの尊厳を守り、選択の自由を尊重したケアを提供。
- 介護者の負担を軽減するために、サポート体制を確立し、心身の健康を支援する。
- 追加事項
- 介護者支援を目的としたメンタルケアを定期的に実施。
- 福祉用具の選定は、Aさんのニーズに合わせて最適なものを選定する。
7. 解説
この支援計画書は、排泄ケアにおける介護者の負担軽減を目的に、短期的および長期的な目標を設定しています。SWOT分析を通じて、強みと弱み、機会と脅威を整理し、課題解決策を明確にしました。また、BSC形式で目標達成の進捗を可視化することで、支援計画の実効性を高めています。倫理的な配慮を行い、Aさんの尊厳を守りながら、介護者を支える体制を整えることが重要です。