症例87 対象者Cさんは80歳、要介護4で、病歴は高血圧症、糖尿病、認知症(中等度)
症例87 対象者Cさんは80歳、要介護4で、病歴は高血圧症、糖尿病、認知症(中等度)。
- 環境 自宅(バリアフリー住宅)。配偶者(80歳、要介護3)と同居。息子は遠方に住んでおり、月1回の訪問。
- 課題 Cさんは認知症により排泄感覚が乏しく、排泄のタイミングや方法に困難を抱えている。また、配偶者も高齢で介護に負担がかかっており、行政の介護サービスの活用が不足している。
- 社会的背景 Cさんは市町村の介護保険サービスを利用していない。地域支援が不十分で、行政による支援の認識が浅い。
症例要件
- 短期的および長期的目標を設定してください。
- 初回訪問時の初期アドバイス内容を示してください。
- 社会資源の活用について具体的に提案してください。
- 詳細なSWOT分析およびクロスSWOT分析を用いて課題解決策を整理してください。
- BSC(バランススコアカード)形式で目標、指標(KPI)、進捗状況、次のアクションを明記してください。
- 必要な倫理的配慮や追加事項について記載してください。
- 作成した計画について解説を加えてください。
解答例
1. 短期的および長期的目標
- 短期目標(1~3か月)
- 介護保険サービスを活用し、訪問介護サービス(月2回)を導入。
- Cさんと配偶者への排泄ケア教育を行い、トイレ誘導を試みる。
- 地域包括支援センターを通じて、介護者支援サービス(カウンセリング、リフレッシュ支援)を提案。
- 医療機関を通じてCさんの排泄に関する評価を行い、適切な福祉用具の導入を検討。
- 長期目標(6~12か月)
- 介護保険サービスの全体的な導入(訪問介護、デイサービス等)。
- Cさんの排泄自立を目指し、定期的なリハビリテーションを実施。
- 地域のボランティア活動への参加や、地域の高齢者支援団体と連携して孤立防止を図る。
- 配偶者への負担軽減を目的とした訪問介護サービスの頻度増加。
2. 初期アドバイス内容
- 排泄ケアの基本的指導
- Cさんの排泄のタイミングを予測し、定期的にトイレ誘導を行う。
- 排泄補助具(ポータブルトイレや尿漏れパッドなど)の活用を提案し、Cさんの不安や負担を減らす。
- 配偶者には、排泄ケアの方法や認知症に伴うケアのポイントを指導し、協力をお願いする。
- 社会資源の活用
- 介護保険サービス(訪問介護、デイサービス)の導入を提案し、地域包括支援センターに問い合わせを行う。
- 地域の高齢者福祉活動やボランティアグループの参加を勧め、Cさんの社会的孤立を防ぐ。
- 市町村の介護相談窓口を通じて、Cさんおよび配偶者の生活支援制度を確認し、最適なサポートを提供。
3. 社会資源の活用
- 介護保険サービス
- 介護保険サービスを通じて、訪問介護(週2回)やデイサービスを導入し、Cさんおよび配偶者の生活支援を強化。
- 介護保険による福祉用具の提供を活用し、Cさんの排泄をサポートする道具を整備。
- 地域包括支援センター
- Cさんの家庭環境に応じて、地域包括支援センターに相談し、最適なサービスを提供。
- 配偶者への負担軽減策として、リフレッシュ支援やカウンセリングサービスを提案。
- 地域ネットワークの活用
- 近隣のボランティアグループや高齢者福祉活動への参加を促し、Cさんおよび配偶者が地域の支援を受けられるよう調整。
- 地域の福祉イベントや講座を案内し、社会的孤立を防ぐ。
4. SWOT分析
強み(Strengths) |
弱み(Weaknesses) |
- バリアフリー住宅で安全性が高い。 |
- Cさんの認知症により排泄の感覚が不明瞭。 |
- 地域包括支援センターが利用可能。 |
- 介護保険サービスの利用状況が不十分。 |
機会(Opportunities) |
脅威(Threats) |
- 介護保険サービスの利用拡大。 |
- 介護者(配偶者)の心身的負担の限界。 |
- 地域ボランティア活動の充実。 |
- Cさんの認知症の進行によるケアの難易度上昇。 |
クロスSWOT分析
- S×O
地域包括支援センターを活用し、Cさんと配偶者のケア支援を強化。
- W×O
介護保険サービスを迅速に導入し、排泄ケアの負担を減らす。
- S×T
バリアフリー住宅の利点を活かして、福祉用具や排泄介助を効率的に提供。
- W×T
Cさんの認知症進行に伴い、定期的なリハビリや認知症ケアを導入し、ケアの質を向上させる。
5. BSC形式
視点 |
目標 |
指標(KPI) |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客(利用者) |
Cさんの排泄ケアの安定化。 |
排泄失敗回数(月別記録)。 |
初期段階で失敗回数が減少。 |
定期的なトイレ誘導で改善を目指す。 |
財務 |
福祉用具の導入費用の効率的利用。 |
月間福祉用具利用料(削減額)。 |
ポータブルトイレ、手すりなど導入開始。 |
助成金申請や市町村の支援を活用。 |
業務プロセス |
介護者の支援を強化。 |
介護者のストレスレベル(評価)。 |
介護者支援サービス開始。 |
追加的なリフレッシュプログラムを実施。 |
学習と成長 |
介護者とCさんの心身健康を保つ。 |
介護者の心身健康度(主観評価)。 |
介護者の心身状態が改善。 |
介護者支援の強化、定期的な評価。 |
6. 倫理的配慮および追加事項
- 倫理的配慮
- Cさんおよび配偶者の選択を尊重し、必要な支援を提供する。
- 介護者の負担軽減を意識した支援を行い、過度な負担をかけないよう配慮する。
- 追加事項
- 定期的な訪問とフィードバックにより、ケア内容の見直しを行い、柔軟な支援を提供。
7. 解説
この支援計画では、Cさんとその介護者にとって最も効果的な社会資源を利用し、排泄ケアの改善を目指しています。SWOT分析とBSCを通じて、現状分析から具体的なアクションまでを明確化し、進捗を管理する体制を整えています。介護者の負担を軽減し、Cさんの生活の質を向上させるために、継続的なサポートを提案しました。