記述式ケース問題42 78歳女性。軽度の認知症を持ち、最近は幻視やせん妄の症状が出現している。入院中で、排泄に関してのサポートが必要。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
症例42
- 患者情報 78歳女性。軽度の認知症を持ち、最近は幻視やせん妄の症状が出現している。入院中で、排泄に関してのサポートが必要。排泄ケアに対する拒否感が強く、トイレへの誘導やオムツ交換を行うと激しく抵抗することがある。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら継続的な排泄ケアを提供するためのアドバイスを初回から数回にわたって求めます。具体的には、初回アドバイス、1週間後の経過観察後のアドバイス、2週間後の再評価後のアドバイスをそれぞれ記載してください。
解答例
初回アドバイス
- 環境の整備 トイレの周辺を明るくし、視認性を高めるために必要な明かりを確保します。また、患者が安心して利用できるよう、トイレ内に気に入った絵や装飾を飾ります。
- 幻視への配慮 幻視に対する理解を深め、患者が何を見ているのかを静かに尋ね、共感的な態度で接します。「何が見えますか?」と問いかけ、彼女の感じていることを受け止める姿勢が大切です。
- リラックスできる誘導方法
排泄ケアの際には、穏やかな声で「一緒に行きましょうか?」と誘導し、あまり強く促さないようにします。好きな音楽を流すことで、リラックスできる環境を作ることも効果的です。
- 皮膚ケアの実施 失禁がある場合、皮膚の清潔を保つために、頻繁にオムツ交換を行い、湿った皮膚を清潔に保つよう心掛けます。必要に応じて、バリアクリームなどを使用して皮膚の保護を行います。
1週間後の経過観察後のアドバイス
- 経過の評価 患者は幻視が続いているが、トイレの使用に対する抵抗が若干和らいでいる。時折、トイレの場所を忘れることがあるため、方向感覚のサポートが必要。
- 継続的な誘導方法の改善
トイレに行く際には、具体的な言葉で場所を指示し、同行することを強調します。「お手洗いはここです。一緒に行きましょう」と繰り返し言うことで、患者の理解を助けます。
- 心理的サポートの強化
患者が幻視を感じているときには、落ち着いた声で話しかけ、「あなたは安全です」といった言葉で安心感を与えます。また、日々の出来事を軽く話し、気を紛らわせる工夫も有効です。
- 皮膚ケアの確認 定期的に皮膚の状態を確認し、必要に応じて皮膚科医と相談します。入浴後は特に注意し、保湿を心掛けるようにします。
2週間後の再評価後のアドバイス
- 再評価の結果 幻視の症状は依然として存在しているが、排泄ケアに対する拒否感は少し緩和された。トイレ使用時に少し自信を見せる場面も見られる。
- 成功体験の強調 トイレに行くことができた際には、十分に褒めてあげ、自己肯定感を高めるよう努めます。「素晴らしいですね!よくできました」と言ってあげることで、次回もトイレに行こうという意欲を促します。
- 幻視に対する更なる配慮
幻視が強く出る時間帯を観察し、その時間帯には特に注意を払い、共感的な姿勢で接します。患者の幻視の内容に合わせて、気を紛らわせる活動(絵本の読み聞かせなど)を行うことも検討します。
- 他職種との連携 看護師やリハビリスタッフと連携を取り、排泄ケアに対する統一したアプローチを確立します。精神的なサポートも含めた多角的なアプローチが重要です。
解説
この一連のアドバイスは、患者の状態を観察しながら柔軟に対応し、安心感を与えることを目的としています。経過観察を通じて、患者の反応に応じた適切なケアを提供し、排泄ケアの質を向上させることが重要です。