記述式ケース問題39 患者情報 85歳女性、進行したパーキンソン病と認知症の診断。トイレ誘導を拒否し、失禁が頻繁に見られる。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
症例39
- 患者情報 85歳女性、進行したパーキンソン病と認知症の診断。トイレ誘導を拒否し、失禁が頻繁に見られる。徘徊行動もあり、介護者は非常にストレスを抱えている。家庭内では在宅介護者が1名おり、家族は他に介護のサポートを行うことができない状況。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら継続的な排泄ケアに関する支援計画書を作成してください。具体的には、短期的な目標と長期的な目標を設定し、初回アドバイス、短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月以内)、長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月以内)を、社会資源を有効活用する内容でまとめ、在宅介護者がモチベーションを持てるような支援策を提案してください。
解答例
支援計画書
患者情報
- 名前 佐〇〇子
- 年齢 85歳
- 性別 女性
- 診断 進行したパーキンソン病、認知症
- 主な問題 トイレ誘導への拒否、頻繁な失禁、徘徊行動
短期的目標
- トイレ誘導に対する拒否行動を25%減少させる(初回から1ヶ月以内)。
- 失禁の頻度を週に3回以下に減少させる。
長期的目標
- トイレ誘導を50%の成功率で行えるようにする(3ヶ月以内)。
- 自発的なトイレ利用の頻度を週に1回以上に増加させる。
初回アドバイス(1日目)
- 環境の整備
- トイレ周辺を安全で使いやすくするため、照明を明るくし、滑り止めマットを敷く。便座の高さを調整し、必要に応じて手すりを取り付ける。
- 信頼関係の構築
- 患者と会話をしながら、「一緒に行こう」と声をかけ、徐々に信頼を築く。家族が関与し、安心感を持たせるために同伴する。
- 社会資源の利用
- 地域の訪問介護サービスを利用し、専門の介護者が定期的に訪問することで、介護者の負担を軽減。リハビリテーションの専門家と連携して、適切な運動プログラムを導入。
短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月後)
- 進捗の評価
- トイレ誘導の成功率と失禁の頻度を記録し、進捗状況を評価。特に成功した場合は、即座に「よくできました!」と声をかけ、ポジティブなフィードバックを与える。
- 行動療法の導入
- トイレ誘導を行う際は、患者がリラックスできる時間帯を選び、焦らず優しく接する。トイレへの誘導が成功した際には、リラックスした雰囲気を持続させる。
- 社会資源の活用
- 地域のデイサービスやグループホームと連携し、外部の支援を受けることで、介護者のストレスを軽減。家族も参加できるイベントやプログラムに参加することを奨励。
- 介護者のサポート
- 介護者がストレスを感じないよう、定期的に休息を取る時間を設ける。例えば、短時間の介護者サポートを受けることや、家族で交代で介護を行う。
長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月後)
- 定期的な評価
- トイレ誘導の成功率や自発的なトイレ利用の頻度を記録し、患者の状態の変化を見逃さないようにする。
- 自立支援の強化
- 患者に選択肢を与えることで、自発的な行動を促進。「今、トイレに行きたいか、少し待つか、どうする?」と問いかけ、決定を促す。
- 社会資源の利用促進
- 地域の医療機関やケアマネージャーと連携し、必要なサービスや支援を受けることを奨励。定期的なカンファレンスを設け、患者の状態を共有し、ケア方針を見直す。
- 家族・介護者への教育
- 家族や介護者に、排泄ケアに関する成功事例や方法をシェアし、共に学ぶ機会を設ける。多職種が協力して情報を提供し、サポートする。
- メンタルヘルスの重視
- 介護者のストレス軽減のための活動を計画し、定期的にリフレッシュの時間を持つことを提案。地域の支援グループへの参加を促す。
解説
この支援計画書は、困難事例に対して患者と家族が共に前向きに取り組むための具体的な方法を示しています。介護者が自信を持ち、患者のケアをより良くするために、進捗を記録し、ポジティブなフィードバックを重視することで、共に成長していける環境を整えることが重要です。また、社会資源を積極的に活用することで、介護者の負担を軽減し、より効果的な支援が可能となります。