記述式ケース問題44 85歳女性、軽度の認知症を患っている。排泄に関しては自立を目指しているが、トイレの場所が分からなくなることが多く、トイレ誘導が必要。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
症例44
- 患者情報 85歳女性、軽度の認知症を患っている。排泄に関しては自立を目指しているが、トイレの場所が分からなくなることが多く、トイレ誘導が必要。家族はフルタイムで働く息子と、その妻がサポートを行っている。患者は排泄に対して恥ずかしさを感じており、協力的でないことがある。
設問内容
この患者に対して、経過観察を行いながら、排泄ケアの支援計画書を作成してください。以下の点を含めてください。
- 初回から短期的および長期的な目標を設定してください。
- 在宅介護者と当事者の今後が見えるようなアドバイス内容を示してください。
- 社会資源を有効活用するための提案をしてください。
- SWOT分析とクロスSWOT分析を行い、支援計画を策定してください。
- BSC(バランススコアカード)とKPI(重要業績評価指標)を用いて進捗状況を求める形式でまとめてください。
解答例
1.
短期的目標 (1〜3ヶ月)
- 目標1 トイレ誘導の頻度を週に5回実施し、患者の安心感を向上させる。
- 目標2 排泄ケアのためのマニュアルを作成し、家族に配布する。
- 目標3 地域の訪問介護サービスに登録し、専門職によるアドバイスを受ける。
2.
長期的目標 (6ヶ月〜1年)
- 目標1 患者が自力でトイレに行く自信を持てるよう、自己管理能力を高める。
- 目標2 家族が患者のケアに対して自信を持てるよう、定期的な研修に参加する。
- 目標3 地域の認知症支援ネットワークと連携し、定期的な情報交換を行う。
3.
アドバイス内容
- 介護者へのアドバイス
「トイレの場所を明示的に示すために、サインを付けておくと良いです。また、地域のサポートグループに参加して、他の介護者と経験を共有することも大切です。」
- 当事者へのアドバイス
「トイレに行くことは自然なことですので、恥ずかしがらずに声をかけてください。徐々に慣れていくと思いますよ。」
4.
社会資源の有効活用
- 地域の訪問介護サービスやデイサービスを利用し、専門職からのアドバイスを受ける。
- 認知症支援団体のセミナーやワークショップに参加し、知識を深める。
SWOT分析
Strengths
(強み) |
Weaknesses
(弱み) |
家族が介護を行っている |
軽度の認知症により混乱することがある |
地域のサポートが利用可能 |
自尊心が高く、恥ずかしがる傾向がある |
Opportunities
(機会) |
Threats
(脅威) |
地域の介護支援サービスの充実 |
症状の進行によるさらなる困難 |
認知症支援団体の研修や交流会 |
介護者の負担増加によるサポートの低下 |
クロスSWOT分析
強み (S) |
機会 (O) |
S-O戦略 |
家族が介護を行っている |
地域の介護支援サービスの充実 |
家族と専門家が協力し、効果的なケアプラン を策定する。 |
地域のサポートが利用可能 |
認知症支援団体の研修や交流会 |
地域の支援を活用し、情報交換を行うことで、 ケアの質を向上させる。 |
弱み (W) |
脅威 (T) |
W-T戦略 |
軽度の認知症により混乱することがある |
症状の進行によるさらなる困難 |
専門職の支援を早期に受け、症状の進行を抑えるための対策を講じる。 |
自尊心が高く、恥ずかしがる傾向がある |
介護者の負担増加によるサポートの低下 |
定期的な休息を介護者に提供し、ストレスを軽減する手段を講じる。 |
BSC(バランススコアカード)とKPI
視点 |
目標 |
指標 |
KPI |
進捗状況 |
次のアクション |
顧客 |
患者の排泄不安を軽減 |
排泄時の不安度 (アンケート) |
不安度の減少 (目標 20%減少) |
15%減少 |
環境調整の見直し |
財務 |
コスト効率の良い介護 |
社会資源の利用率 |
利用率 (目標 75%) |
70% |
新たな資源の調査 |
内部プロセス |
排泄ケアの質を向上 |
専門職による評価 |
評価の質 (目標 良好) |
良好 |
定期的な評価の実施 |
学習・成長 |
介護者のスキル向上 |
研修参加率 |
参加率 (目標 80%) |
60% |
次回研修の計画 |
解説
この支援計画を通じて、短期的および長期的な目標を明確にし、介護者と当事者がともに成長していく姿を見えるようにすることが重要です。社会資源を活用し、SWOT分析を通じて強みを最大限に活かし、課題に取り組むことで、より良い排泄ケアを実現していくことが可能です。