記述式ケース問題43 78歳男性、認知症(アルツハイマー型)の診断。排泄ケアが必要だが、トイレへの誘導を拒否し、失禁が頻繁に見られる。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
症例43
- 患者情報 78歳男性、認知症(アルツハイマー型)の診断。排泄ケアが必要だが、トイレへの誘導を拒否し、失禁が頻繁に見られる。徘徊や興奮があり、在宅介護者は介護に疲れている。介護者に対するサポートも必要。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら継続的な排泄ケアに関する支援計画書を作成してください。具体的には、短期的な目標と長期的な目標を設定し、初回アドバイス、短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月以内)、長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月以内)を、在宅介護者がモチベーションを上げられるように具体的かつ励みになる内容でまとめ、リハビリを含めてください。
解答例
支援計画書
患者情報
- 名前 佐〇〇太郎
- 年齢 78歳
- 性別 男性
- 診断 アルツハイマー型認知症
- 主な問題 排泄ケアへの拒否、頻繁な失禁、トイレ誘導の困難、徘徊
短期的目標
- トイレ誘導に対する拒否行動を40%減少させる(初回から1ヶ月以内)。
- 失禁の回数を週に2回以下に抑える。
長期的目標
- トイレ誘導を80%の成功率で行えるようにする(3ヶ月以内)。
- 患者が自発的にトイレに行く頻度を増加させる(週に3回以上の自発的トイレ利用)。
初回アドバイス(1日目)
- 環境の整備
- トイレの周囲を明るくし、見える場所に目印を設置。トイレの使用を促すため、カラフルなマットやシールを使う。
- トイレの中に安心感を持たせるために、好みの香りの消臭剤を使ったり、好きな写真を飾ったりする。
- 信頼関係の構築
- 「トイレに一緒に行こう」と優しく声をかけ、手をつないで一緒に移動することで安心感を与える。
- 介護者は落ち着いた声で「大丈夫、一緒に行こうね」と繰り返し伝える。
- ポジティブなフィードバック
- どんな小さな成功でも、すぐに「よくできたね!」と褒め、患者の自己肯定感を高める。
- 家族全体で患者の進捗を共有し、成功を祝う時間を設けることで、共に頑張る雰囲気を作る。
短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月後)
- 進捗の評価
- トイレ誘導の成功率と失禁の頻度を記録し、進捗状況を振り返る。特に良い結果が出た場合には、しっかりと褒め合い、達成感を共有する。
- 行動療法の導入
- トイレ誘導の際、患者が落ち着いているタイミングを見極め、焦らず優しく声をかける。リラックスした状態で行動を促すことが大切。
- リハビリの導入
- 簡単な運動(例えば、座ったままでの足踏みや軽いストレッチ)を取り入れ、身体機能を維持することで、トイレに行く意欲を高める。
- 介護者も一緒に参加し、楽しく運動することで、コミュニケーションを促進する。
長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月後)
- 定期的な評価
- トイレ誘導の成功率や自発的なトイレ利用の頻度を記録し、患者の状態の変化を見逃さないようにする。
- 進捗を家族全体で共有し、サポートを強化するために定期的なフィードバックを行う。
- 自立支援の強化
- 患者に選択肢を与えることで、自分でトイレに行く決定を促す。「今行きたいのか、少し待つか、どうする?」と問いかける。
- トイレの時間を毎日のルーチンに組み込むことで、患者の自立を促進する。
- 家族・介護者への教育
- 家族や介護者に、排泄ケアにおける成功事例や方法をシェアし、共に学び合う場を設ける。
- 介護者のメンタルヘルスを重視し、ストレスを軽減するためのサポート(例えば、リフレッシュの時間を持つこと)を提案する。
解説
この支援計画書は、困難事例に対し、患者と家族が共に前向きに取り組むための具体的な方法を示しています。介護者が自信を持ち、患者のケアをより良くするために、進捗を記録し、ポジティブなフィードバックを重視することで、共に成長していける環境を整えることが重要です。リハビリを取り入れることで、身体機能の維持・向上にもつながり、在宅介護者のモチベーションも高まります。