記述式ケース問題40 85歳女性、進行した認知症。失禁の問題があり、排泄の際に強い不安や混乱を示すことが多い。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
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症例40
- 患者情報 85歳女性、進行した認知症。失禁の問題があり、排泄の際に強い不安や混乱を示すことが多い。身体的には自立しているが、精神的な不安定さがあり、介護者(娘)はストレスを抱えている。医療的な介入や社会資源の活用が必要である。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら排泄ケアに関する支援計画書を作成してください。具体的には、短期的な目標と長期的な目標を設定し、初回アドバイス、短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月以内)、長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月以内)を、在宅介護者がモチベーションを持てるように多職種連携や社会資源を有効活用する内容でまとめてください。
解答例
支援計画書
患者情報
- 名前 佐〇〇子
- 年齢 85歳
- 性別 女性
- 診断 認知症
- 主な問題 失禁、不安感、トイレ誘導の困難
短期的目標(1ヶ月以内)
- トイレ誘導の成功率を20%向上させる。
- 失禁の回数を週に2回以下に減少させる。
長期的目標(3ヶ月以内)
- 自発的なトイレ利用を週に1回以上に増加させる。
- 介護者のストレスレベルを自己評価で20%減少させる。
初回アドバイス(1日目)
- 環境整備
- トイレへの道を明るくし、視覚的な目印を設ける(例えば、トイレの入り口にサインやシールを貼る)。
- トイレ内の安全性を確認し、滑り止めマットを使用する。
- 安心感を与えるコミュニケーション
- 患者との信頼関係を築くために、優しい口調で声をかけ、ゆっくりとした動作でトイレ誘導を行う。
- 身体的な接触を通じて安心感を与える(手をつなぐなど)。
- 多職種連携の提案
- 地域の訪問看護サービスや介護支援専門員に相談し、医療的なサポートを受ける。定期的に訪問してもらうことで、専門的なアドバイスを得る。
短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月後)
- トイレ誘導の成功率のモニタリング
- トイレ誘導の実施状況を記録し、成功した回数を確認。具体的なデータをもとに介護者と話し合う。
- 成功した際には褒めることで、患者の自信を高める。
- リラクセーション技法の導入
- 患者が不安を感じる時間帯にリラクセーション技法(深呼吸、軽いマッサージなど)を取り入れる。これにより、トイレ利用時の不安を軽減する。
- 社会資源の活用
- 地域の支援グループやフォーラムに参加し、他の介護者との情報交換を促す。支援の中で、心理的なサポートを得ることができる。
長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月後)
- 継続的な評価と見直し
- 定期的に目標の進捗を評価し、必要に応じて支援計画を見直す。特に、成功したアプローチや新たな課題を整理する。
- 自立支援の強化
- 患者に選択肢を与え、トイレに行くタイミングを自ら決められるようにする。「今行きますか?それとも少し待ちますか?」といった問いかけをすることで、自発的な行動を促す。
- 多職種の協力を促進
- 地域のリハビリテーションセンターと連携し、患者に合わせたリハビリプログラムを提案。身体的な健康を維持するための運動を取り入れる。
- 介護者へのサポート
- 介護者が自分の感情やストレスを適切に表現できる環境を整える。定期的に介護者向けのセミナーやワークショップに参加することを奨励。
- 精神的健康の重要性
- 介護者自身がストレスを感じないよう、定期的に自分のための時間を持つことを奨励。趣味やリフレッシュの時間を作ることが大切。
解説
この支援計画書は、困難事例における患者とその家族が共に前向きに取り組むための具体的な方法を示しています。多職種連携や社会資源を活用することで、介護者の負担を軽減し、患者により良い排泄ケアを提供することが可能です。介護者が自信を持ち、効果的な支援を行うために、進捗を記録し、ポジティブなフィードバックを重視することが重要です。