排尿トラブルの考え方
排尿トラブルの考え方
トイレが近くなった。夜に4~5回トイレに行って、良く寝られない。夜中2時間おきにトイレに行き、間に合わなくて下着を濡らした。トイレに行った後、終わっても勝手に漏れて下着を汚した。会議中に強い尿意をもよおし、トイレにかけこんでも、尿が素直に出ない。尿をしても、まだ残っている感じがあり、何度もトイレに通う…等々の排尿トラブルが発生している。高齢になるとこういった症状を訴える方が多くなる。しかし、高齢を理由にまったく見過ごされるケースがあります。
1.尿失禁
尿失禁とは、無意識に尿が漏れてしまうことをいいます。加齢による神経機能の低下や、前立腺がんなどの深刻な病気など、さまざまな原因が考えられます。尿失禁は生命を脅かすものではありませんが、精神的苦痛や社会的問題など、日常生活に重大な問題を引き起こす可能性があります。したがって、適切な治療を受け、それを管理するための措置を講じることが重要です。
尿失禁の原因はさまざまです。腎臓は尿を生成し、膀胱に蓄えます。膀胱は伸縮性のある筋肉でできており、成人で最大 500ml の尿を保持できます。尿が溜まって膀胱の筋肉が伸びると、脳が脊髄から信号を受け取り、尿意を引き起こします。しかし、尿意を感じてもすぐには尿が出ません。脳は膀胱と尿道に信号を送り、便器に排出されるまで尿を保持します。尿失禁は、これらのメカニズムの異常によって引き起こされます。
① 骨盤底筋の緩み
骨盤底筋の緩みは尿失禁の原因となります。これらの筋肉は、膀胱や尿道などの臓器を支えており、加齢、肥満、妊娠などの要因によって衰える可能性があります。咳やくしゃみをしたり、重いものを持ったりするなど、腹圧がかかると、弱った筋肉が尿漏れを防ぎきれなくなることがあります。
② 膀胱や神経機能の異常
年齢を重ねると膀胱の機能が低下し、膀胱が過度に収縮して急激に尿意が強くなることがあります。これにより、尿失禁が生じる可能性があります。また、脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患による排尿の神経制御異常も、急な尿意や尿失禁につながることがあります。
③ 排尿障害
前立腺肥大症や前立腺がん、糖尿病などによって排尿障害が起こると、膀胱内に多量の尿がたまるようになるため、たまった尿が少しずつ漏れ出るように失禁することがあります。
④ 身体機能・認知機能の低下
加齢による身体機能や認知機能の低下により、トイレに間に合わなくなったり、正しい場所に排尿できなくなったりするなどの症状が現れ、尿失禁を引き起こすことがあります。
前述のように夜間の頻尿、尿もれ、排尿困難などの排尿障害の症状について説明しましたが、これらの症状は高齢者によく見られ、骨盤底筋の衰弱、膀胱や神経機能の異常、排尿障害、身体機能や認知機能の低下など、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。無意識に尿が漏れてしまう尿失禁は、日常生活に大きな支障をきたす可能性があり、適切な治療と対策が必要です。
過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)
過活動膀胱とは、突然トイレに行きたくなり我慢するのが難しい、日中や夜中に何度もトイレに行くなど、尿失禁を伴うことが多い病気です。
過活動膀胱は、膀胱の筋肉の不随意収縮によって引き起こされます。この収縮は、神経疾患、感染症、投薬など、さまざまな要因によって発生する可能性があります。過活動膀胱は高齢者によく見られますが、若い人にも発生する可能性があります。
尿路感染症(UTI:urinary tract infection)
尿路感染症は、細菌が尿路に侵入して感染を引き起こすときに発生します。尿路感染症は、排尿時の強い衝動、排尿時の灼熱感、および頻繁な排尿の必要性を引き起こす可能性があります。尿路感染症は男性よりも女性に多く、抗生物質で治療できます。
前立腺の問題
前立腺肥大などの前立腺の問題は、排尿困難、頻尿、尿の流れの弱さを引き起こす可能性があります。前立腺がんは、血尿や尿失禁などの泌尿器症状を引き起こすこともあります。
糖尿病
糖尿病は、膀胱を制御する神経に損傷を与え、尿失禁や過活動膀胱を引き起こします。血糖値が高いと、頻尿になることもあります。
薬の問題
利尿薬などの特定の薬は、尿の生成と排尿の頻度の増加を引き起こす可能性があります。α遮断薬などの薬は、膀胱の筋肉を弛緩させ、尿失禁を引き起こす可能性があります.
適切な診断と治療により、生活の質が大幅に向上する可能性があるため、これらの排尿の問題が発生している場合は、医療提供者に相談することが重要です。