排泄ケアの生活行為アセスメント 1.ICFによる障害の捉え方
排泄ケアの生活行為アセスメント
適切な失禁ケアを提供するには、エビデンスに裏付けられた正しい知識と技術が必要です。排泄トラブルは誰にとってもデリケートな問題であり、運動機能の低下や排尿・排便の衝動の低下により、高齢者に多くみられます。
また、年齢とともに身体機能が低下すると、排泄の問題が同時に発生することが多く、予防的なケア方法や製品が必要です。一人ひとりのQOL(Quality of Life)を向上させるためには、排泄を総合的に理解し、一人ひとりに合わせた排泄ケアを実践することが重要です。そのため、まずは排泄の基礎知識を身につけることが不可欠です。
1.ICFによる障害の捉え方
WHO(世界保健機構)が1980年に国際疾病分類(ICD:International Classification
of Impairments, Activities,and Participation)の補助として発表した国際障害分類(ICIDH:International Classification of Impairments, Activities,and
Participation)が用いられてきました。この分類による身近な障害の例として、近視になって黒板が見えずに勉強できなくなる。すると、それは社会的不利につながる。同様に、足に障害があり歩行できなくなると、社会的不利に直結するとのことで、眼鏡や車いす等の福祉用具の発達により、社会的不利につながらなくなってきました。
図.ICID(国際障害分類)
図.ICF(国際生活機能分類)
そこで、WHOでは、2001年5月の第54回総会において、その改訂版として国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)を採択しました。それは、例え、近視になって黒板が見えずに勉強できなくなっても補助具の眼鏡や黒板の近くに座るなどの環境因子の改善で、授業を受け勉強ができ社会的不利につながらない。同様に、歩けなくとも車いすがあり、バリアフリーであれば、社会的不利につながらないことが、説明できるようになりました。つまり、ICIDでは、補助具や環境の要素が入っていない考え方が問題となっていましたが、ICF導入により説明がつくようになりました。
ICFを詳しく説明すると、図のように人間の生活機能と障害についての分類法として、病気やケガ、体調の変化などの「健康状態」。
手足の動きや視覚・聴覚、内臓、精神などの「心身機能」と指の関節、胃や腸、皮膚などの「身体構造」、歩くことや日常生活に必要な動作をはじめ、家事や仕事、余暇活動などを「できる活動」と「している活動」の2つの面に分けて捉える「活動」、主婦としての役割や職場などの組織で役割を果たすこと、地域の会合や趣味の集まりへの「参加」などの『生活機能要素』。
さらに、建物や交通機関、家族や友人などの人間関係、法律や制度、サービスや福祉用具などの「環境因子」と年齢、性別、民族、生活歴、価値観、ライフスタイルなどの「個人因子」を表す『背景因子要素』がそれぞれ影響し合って成り立ち、約1,500項目に分類することができます。
ICFは、国際の名がつく通り、世界共通のスタンダードであり、専門分野や立場の異なる人々の共通理解を促進するツールとなってます。