記述式ケース問題2 82歳・女性、高齢に伴う身体の衰え、軽度認知症、尿失禁

 


排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題

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ケース2  利用者E82歳・女性)

利用者Eは、高齢に伴う身体の衰えと、軽度の認知症を抱え、自宅で息子夫婦と生活しています。尿失禁があり、夜間はおむつを着用していますが、日中はトイレを使いたいという強い意欲を持っています。しかし、トイレまでの移動中に頻繁に転倒しそうになるため、家族は日中もおむつを使用させるべきか悩んでいます。また、利用者E自身は日中のおむつ着用に対して強い抵抗感を示しています。

質問

  1. 利用者Eの排泄ケアにおいて、日中のトイレ利用を促進しつつ安全を確保するために、どのような具体的な対策が考えられますか?
  2. 利用者Eの家族に対して、排泄ケアに関する負担軽減やサポートの提案をしてください。
  3. 認知症を持つ利用者Eへの心理的ケアの観点から、介護スタッフに対するアドバイスをどのように行いますか?

解答例


1. 利用者Eの日中のトイレ利用促進と安全確保に関する具体的な対策

  • トイレまでの安全な動線の確保
    利用者Eがトイレまでの移動中に転倒しそうになるのは、環境が安全でない可能性があります。まず、廊下やトイレまでのルートに手すりを設置し、移動時の安全を確保します。また、床に滑り止めマットを敷き、家具や障害物をできるだけ取り除くことで、移動中のリスクを軽減します。
  • 移動補助具の導入
    歩行が不安定な場合、歩行器や杖などの移動補助具を使用することを提案します。これにより、利用者Eが自力でトイレに行けるようになり、転倒リスクを軽減することができます。また、介助が必要な場合には、家族や介護スタッフがサポートすることを奨励します。
  • 定時のトイレ誘導の実施
    定期的にトイレに誘導することで、失禁のリスクを減らし、利用者Eのトイレ利用への意欲を維持します。毎日決まった時間にトイレに誘導することで、利用者が排泄をコントロールしやすくなり、安心感を与えることができます。特に、食後や水分摂取後に誘導することが効果的です。

2. 利用者Eの家族への負担軽減とサポートの提案

  • 日中のケア方針の共有と協力
    利用者Eの強い意思を尊重しつつ、家族が無理なくサポートできるように、日中はトイレ誘導をしながら、おむつやパッドも併用する方法を提案します。利用者に目立たない吸水パッドなどを使用することで、失禁時の不安を軽減し、トイレ利用の希望を保ちつつ、家族の負担を減らすことができます。
  • 在宅介護サービスの利用
    家族の負担を軽減するため、デイサービスや訪問介護を活用することを提案します。これにより、日中のトイレ誘導や見守りの役割を家族だけでなく、専門の介護スタッフが担うことができ、家族の精神的・身体的な負担を軽減できます。
  • 家族への精神的サポートの提案
    排泄ケアに対する悩みやストレスを抱える家族には、定期的に相談できる場を設け、心のケアをサポートすることが重要です。家族向けのサポートグループやカウンセリングの利用を推奨し、介護の負担感を減らすための具体的な相談相手を提供します。

3. 認知症を持つ利用者Eへの心理的ケアと介護スタッフへの指導

  • 利用者の自尊心を尊重するケア
    認知症が進行している場合でも、利用者Eの自尊心を尊重することが大切です。利用者Eが日中のおむつ着用に抵抗感を示しているため、介護スタッフには、トイレ誘導の際に丁寧に説明し、失禁があっても利用者を責めずに対応することを徹底するよう指導します。恥ずかしさを和らげるための言葉がけや、プライバシーを守る工夫も重要です。
  • 心理的サポートの提供
    利用者Eが自らトイレに行こうとする意欲を持っていることは前向きなサインです。この意欲を損なわないよう、トイレに行く際に介助が必要であっても、可能な限り自主的な行動を促し、成功体験を積み重ねることが大切です。介護スタッフは、利用者Eの感情に配慮し、失敗時にも落ち着いた対応を心がけます。
  • 認知症ケアにおけるコミュニケーションの工夫
    認知症を持つ利用者には、繰り返し同じことを伝える必要があることが多いですが、介護スタッフには、焦らずゆっくりとした口調で話しかけ、利用者Eの理解を助けることを指導します。また、トイレに誘導する際に、トイレの場所を視覚的に分かりやすくする(ドアにトイレのマークを付ける、道案内を貼るなど)ことで、混乱を防ぐ工夫を取り入れます。

解説

この解答例では、利用者Eの身体的・精神的なニーズを考慮し、安全かつ尊厳を守るための具体的な排泄ケアの提案と、家族や介護スタッフに対する指導を行っています。利用者の意欲や自尊心を尊重しながら、現実的な介護の負担を軽減しつつ、家族と介護スタッフが連携して最適なケアを提供することを目的としています。また、認知症ケアにおける心理的サポートの重要性にも触れ、利用者が安心して日常生活を送るための総合的なアプローチを示しています。

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