記述式ケース問題10 75歳・女性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と心不全、呼吸困難と浮腫、頻尿



排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題

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ケース10  利用者M75歳・女性)

利用者Mは、近年の慢性閉塞性肺疾患(COPD)と心不全により、呼吸困難と浮腫が見られます。これらの症状により、日常的に水分摂取を制限しているにもかかわらず、頻繁な尿意や排尿困難を経験しています。また、心不全による浮腫のため、排便も不規則で便秘がちです。加えて、COPDの影響で、体力が低下し、トイレの移動や長時間の座位に困難を感じています。利用者Mは独居で、訪問介護は週に1回提供されていますが、家族は遠方に住んでおり、緊急時の対応が困難です。

質問

  1. 利用者Mの複雑な症状を踏まえた排泄ケアの改善策を提案してください。
  2. 利用者Mの独居生活を支援するためのコミュニティリソースやサービスを提案し、家族へのサポート方法を述べてください。
  3. 介護スタッフに対する、利用者Mの多面的なケアに関する指導内容を説明してください。

解答例


1. 利用者Mの複雑な症状を踏まえた排泄ケアの改善策

  • 尿管理と便秘対策
    • 水分摂取の調整  利用者Mの水分摂取を適切に管理し、特に排尿の頻度と便秘の予防に配慮します。医師と相談し、体調に応じた水分摂取の適切な量を決定し、軽度の脱水を防ぐための工夫をします。
    • 食事と薬物療法の調整  便秘対策として、食物繊維が豊富な食事を提供し、必要に応じて便秘解消のための薬物療法を検討します。医師の指導に従い、便秘解消剤の使用を適切に管理します。
  • トイレ環境の最適化
    • ポータブルトイレの導入  利用者Mの体力の低下を考慮し、ポータブルトイレの使用を提案します。トイレまでの移動を最小限に抑え、便利な位置に設置することで、排尿のタイミングをより適切に管理できます。
    • トイレ周辺の安全性向上  トイレ周辺に手すりや滑り止めマットを設置し、トイレの使用をより安全にします。また、夜間の視認性を向上させるために夜間用のライトを設置することも提案します。
  • 呼吸困難の管理
    • 座位と体位の調整  利用者Mの呼吸困難を緩和するために、トイレ使用時の座位を調整し、リクライニング式の便座や体位を工夫して呼吸が楽になるように配慮します。
    • 呼吸療法のサポート  呼吸管理が必要な場合、呼吸リハビリテーションや酸素療法を医師と相談し、必要に応じてサポートを提供します。

2. 利用者Mの独居生活を支援するためのコミュニティリソースやサービス

  • 地域支援サービスの活用
    • 地域包括支援センター  地域包括支援センターに相談し、地域のボランティアや支援団体と連携して、定期的な訪問や見守りサービスを依頼します。
    • 訪問看護サービスの強化  訪問看護サービスを週に数回増やし、利用者Mの健康状態の監視と排泄ケアを支援します。
  • 家族へのサポート方法
    • 遠隔サポートの導入  家族が遠方にいる場合、遠隔での状況確認や指示を行うためのテクノロジー(例えば、見守りカメラや健康管理アプリ)を導入し、リアルタイムでのコミュニケーションを可能にします。
    • 家族への教育と相談  家族に対して、利用者Mのケアに関する教育や情報提供を行い、必要な知識やサポートを提供します。また、緊急時の対応策を明確にし、家族と協力して対策を講じます。

3. 介護スタッフに対する、利用者Mの多面的なケアに関する指導内容

  • 包括的なケアの実施
    • 症状管理の協調  利用者Mの複数の健康問題(呼吸困難、心不全、便秘など)に対処するため、スタッフは協力して包括的なケア計画を作成し、必要に応じて調整します。
    • ケアの一貫性の確保  スタッフは、ケアの一貫性を保つために、定期的な情報共有とミーティングを実施し、利用者Mの状態や対応策についての共通理解を持つようにします。
  • 感情的支援とコミュニケーション
    • 利用者の心理的サポート  利用者Mの精神的な安心感を確保するため、スタッフは感情的なサポートを提供し、優しく共感的な対応を心がけます。
    • 家族との連携  家族と定期的に連絡を取り、利用者Mのケアの進捗状況や問題点について情報を共有し、家族と連携して対応策を決定します。
  • 自己ケアとプロフェッショナルサポート
    • ストレス管理とサポート  スタッフ自身のストレスを管理するためのサポートを提供し、ストレス管理技術やリラクゼーション方法についての研修を行います。また、必要に応じてカウンセリングやメンタルヘルスサポートを利用することを奨励します。

解説

この解答例では、利用者Mの複雑な症状に対応するための具体的な排泄ケアの改善策、独居生活を支援するためのコミュニティリソースや家族へのサポート方法、そして介護スタッフに対する指導内容を包括的に示しています。これにより、利用者Mがより快適に生活できるようにするための全体的なアプローチを提供し、ケアの質と家族の負担軽減を実現する方法を提案しています。


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