記述式ケース問題1 75歳・男性、軽度の認知症、夜間に失禁が頻発

 

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ケース1  利用者D75歳・男性)

利用者Dは、軽度の認知症を抱え、自宅で妻と共に生活しています。日中はトイレに自力で行くことができますが、夜間に失禁が頻発しています。妻は、夜中に何度も介助するために睡眠不足になっており、精神的にも負担を感じています。さらに、利用者Dは失禁に対して恥ずかしさを感じており、自尊心が傷ついています。

質問

  1. 利用者Dの夜間の排泄ケアに関して、どのような具体的な改善策を提案しますか?
  2. 利用者Dの妻に対して、負担を軽減するためのアドバイスを提供してください。
  3. 介護スタッフに対して、認知症を持つ利用者Dへの精神的なケアを含む総合的なサポート方法をどのように指導しますか?

解答例


1. 利用者Dの夜間の排泄ケアに関する改善策

  • 定時のトイレ誘導の実施
    利用者Dの夜間の失禁を防ぐため、定時にトイレに誘導する方法を提案します。例えば、就寝前に必ずトイレに行く習慣をつけるとともに、夜中に12回、定時にトイレに誘導することで、失禁の頻度を減らします。トイレ誘導は、妻または介護者が行い、利用者がトイレに行くタイミングをサポートします。
  • ポータブルトイレの設置
    利用者Dが夜中にトイレに行くのが難しい場合、ベッドサイドにポータブルトイレを設置することで移動距離を減らし、失禁のリスクを軽減します。この方法は、夜中にトイレに行こうとする際に混乱や転倒のリスクを避け、より安全な環境を提供します。
  • 失禁対策用のパッドやおむつの使用
    利用者が失禁に対して恥ずかしさを感じる場合、吸水性の高いパッドやおむつの使用を提案します。これは、失禁時の不快感を減らし、ベッドや衣服が汚れることを防ぎます。利用者が羞恥心を感じる場合、介護者はこれが一時的な対策であることを説明し、安心感を与えるよう心がけます。

2. 利用者Dの妻に対する負担軽減のためのアドバイス

  • 夜間の見守り技術の活用
    利用者Dの妻が睡眠不足に陥らないよう、ベッドセンサーや動作検知センサーの導入を提案します。これにより、利用者Dがベッドを離れると妻に通知が送られ、必要な時だけ介助に向かうことができます。これにより、妻が夜間に頻繁に起きなくても済み、睡眠を確保できます。
  • 外部サポートの活用
    家族介護の負担を軽減するために、地域の訪問介護サービスやデイケアサービスを利用することを提案します。短時間でも外部のサポートを利用することで、妻が自身の健康や休息を保ちながら介護を続けることができる環境を作ります。また、定期的にショートステイを利用し、妻が休息を取れる機会を設けることも重要です。
  • 精神的ケアの提供
    妻には、失禁が恥ずかしいことではなく、認知症の進行による自然な変化であることを伝え、利用者Dを責めないようにすることが大切です。夫婦が共に心の負担を軽減し、ポジティブにケアを受け入れるために、介護者支援グループやカウンセリングの利用を勧めます。精神的サポートを受けることで、妻が感情的な負担を軽減し、適切な対応ができるようになります。

3. 介護スタッフへの指導  精神的ケアを含む総合的サポート

  • 認知症に対する理解の促進
    介護スタッフには、認知症の進行による排泄ケアの課題を理解することが重要です。スタッフが認知症の影響を理解し、利用者Dが失禁に対して不安や羞恥を感じていることを考慮して、優しく、尊厳を持って接することを強調します。
  • 利用者の尊厳を守るアプローチ
    排泄ケアは、利用者の尊厳を守ることが最優先です。失禁が起きた際には、すぐに片付けを行い、利用者Dが恥を感じないよう配慮します。ケアを行う際には、プライバシーを尊重し、他の利用者や家族の前では失禁に関する話題を避けることが求められます。これにより、利用者が自己尊厳を保ちながら、安心してケアを受けられます。
  • 心理的サポートの提供
    利用者が失禁に対する羞恥心や不安を感じている場合、介護スタッフは利用者の感情に寄り添い、安心感を与えることが大切です。失禁は年齢や疾患による自然な現象であり、恥ずかしいことではないことを伝え、適切なケアを提供する姿勢を持ちます。スタッフが常に穏やかで丁寧な対応を行うことで、利用者Dの不安を軽減します。
  • ケアプランの定期的な見直し
    排泄パターンや失禁の状況に応じて、ケアプランを定期的に見直すことを指導します。失禁が改善しない場合は、新たなアプローチやケア方法を検討し、利用者Dにとって最適なケアを提供できるよう、チームで協力して対応します。また、家族と定期的に情報を共有し、状況に応じた調整を行うことが重要です。

解説

この解答例では、利用者Dの身体的・精神的な状況を総合的に考慮し、夜間の失禁に対する具体的なケア提案、家族の負担軽減策、そして介護スタッフへの指導を含めた包括的なケアアプローチを示しています。これにより、利用者が尊厳を保ちながら安心してケアを受けられる環境を整え、家族と介護スタッフが協力して最適な排泄ケアを提供できるよう支援することを目的としています。

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