記述式ケース問題23 排泄ケアが必要な脳血管性認知症へのアドバイス

排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題

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ケース23 排泄ケアが必要な脳血管性認知症へのアドバイス

75歳女性のEさんは脳血管性認知症(Vascular Dementia)を患っています。最近、排泄に関する問題が増えており、トイレに行くことを忘れたり、混乱してトイレの場所を探すのに苦労しています。時折、排泄をする際にトイレに行くことができず、失禁してしまうこともあります。また、介助を求める際に言葉がうまく出ないことが多く、周囲の介護者が気づくのが遅れることもあります。Eさんの家族は、どのように彼女の排泄ケアをサポートすればよいのかを悩んでいます。

質問1 Eさんの脳血管性認知症における排泄ケアのアセスメントポイントと、具体的なケア方法を述べてください。

質問2 Eさんがトイレに行くことを忘れてしまう問題に対して、排泄ケア相談員として現場で忘れがちなサポート方法や、具体的な環境整備の提案を行ってください。

質問3 Eさんの家族が排泄ケアを効果的にサポートするために、どのようなアドバイスや情報提供が必要か、具体的に記述してください。


解答例

質問1の解答

Eさんの脳血管性認知症における排泄ケアでは、認知機能の低下に伴う特有の課題を理解し、適切なアセスメントとケアが必要です。

  1. アセスメントポイント
    • 認知機能の低下 Eさんはトイレの場所を忘れることが多く、トイレの必要性を感じる時間が短くなっている可能性があります。このため、排泄行動を促すサインを探る必要があります。
    • 身体的能力の評価 歩行や移動が難しい場合、トイレに行くための身体的なサポートが必要です。筋力やバランスを評価し、必要に応じて補助具を用意します。
    • コミュニケーションの障害 言葉の出にくさがあるため、Eさんが助けを求める際に言葉以外のサインを観察することが重要です。
  2. 具体的なケア方法
    • 定期的なトイレ誘導 Eさんの排泄リズムを把握し、一定の時間ごとにトイレ誘導を行います。たとえば、食後や起床後、就寝前など、日常のルーチンに合わせてトイレに誘導します。
    • 視覚的なサポート トイレの場所を明確にするため、サインや色のついたマーカーを使用します。トイレのドアには「トイレ」の表示をわかりやすくして、迷わないように工夫します。

質問2の解答

Eさんがトイレに行くことを忘れてしまう問題に対しては、環境整備やサポート方法が非常に重要です。

  1. 忘れがちなサポート方法
    • トイレの近くにアラームを設置 定期的にトイレに行く時間を知らせるために、アラーム時計をトイレの近くに設置します。視覚的なサインとともに音でのリマインダーを行うことが効果的です。
    • トイレの使用を促すリマインダー 介護者がEさんにトイレに行くよう声をかける際、簡単なフレーズを決めておくと良いでしょう。たとえば「トイレ行きますか?」といった簡潔な問いかけを行います。
  2. 具体的な環境整備の提案
    • トイレへの導線を確保 Eさんがトイレまでスムーズに行けるよう、障害物を取り除き、明るくしておきます。トイレまでの道を明確にし、視覚的なサポートを行います。
    • トイレ内の環境調整 トイレの便座の高さや手すりを調整し、Eさんが安全に排泄できる環境を整えます。また、トイレの照明を明るくし、安心して利用できる空間を作ります。

質問3の解答

Eさんの家族が排泄ケアを効果的にサポートするためには、以下のようなアドバイスや情報提供が必要です。

  1. 家族へのアドバイス
    • 排泄ケアの重要性を理解する 家族に対して、Eさんの認知症に伴う排泄の問題を説明し、介護者の役割や重要性を理解してもらうことが大切です。失禁を防ぐための定期的なトイレ誘導が必要であることを伝えます。
    • 共感的な接し方 Eさんの状態を理解し、言葉が出にくいことを受け入れ、焦らずに耳を傾ける姿勢を持つよう家族に助言します。コミュニケーションが難しいときは、身体的なサインや表情に注意を払うことが重要です。
  2. 情報提供
    • 排泄ケアに関する教育 家族に対して、排泄ケアに関する基本的な知識や方法を提供します。具体的には、定期的なトイレ誘導の重要性や、失禁時の対処法、トイレ内の環境整備についての情報を共有します。
    • 他の家族との交流を促す 同じ状況にある他の家族との情報交換の場を設けることを勧めます。経験や悩みを共有することで、心理的なサポートを受けることができ、介護の負担が軽減される可能性があります。

解説

  • 脳血管性認知症に特有の課題に対して、アセスメントとケアの方法を適切に組み合わせることが重要です。
  • 環境整備やサポートの工夫を通じて、Eさんの排泄ケアを効果的に行うための具体的なアプローチを提案することが、ケアの質を向上させます。
  • 家族が排泄ケアに関して正しい理解を持つことが、Eさんの快適さを高め、介護者としての自信を持つことにつながります。

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