解説 ご町内の高齢者の皆様が知っておくべき備えと対策




ご町内の高齢者の皆様が知っておくべき備えと対策

(排総研 山口)

ご町内の高齢者の皆様、特に独居高齢者や高齢者家族がいる方々にとって、日常生活や緊急事態に備えることは重要です。転倒事故や突然の入院といった予期しない事態に備え、日頃からできる準備や、必要なサポート体制の整備についてまとめました。

 1. 日常生活における備え

①自宅環境の見直しと安全対策

  • 転倒リスクの軽減: 家の中の段差や滑りやすい床を見直し、転倒の危険がないように対策します。手すりの設置や、家具の配置を工夫して動きやすい空間を作ることが重要です。特に浴室やトイレ、廊下などは、滑り止めマットや手すりを活用し、安全な環境を整えます。
  • 履物や床材の工夫: 室内履きはかかとのある安定したものを選び、転倒を防ぎます。夜間にトイレに行く際のために、足元が明るくなるライトやセンサーライトを設置しておくと安心です。

②緊急時に備えた金銭管理

  • 自動引き落とし設定: 公共料金や医療費の支払いは、事前に自動引き落としを設定しておくことで、入院中や緊急時でも支払いが滞らないようにします。光熱費や電話料金など、生活インフラに関わる支払いは特に重要です。
  • 高額療養費制度の活用: 医療費が高額になった場合に備えて、高額療養費制度や限度額適用認定証を事前に申請しておくと、入院時の経済的な負担が軽減されます。

 2. 緊急時の備えと対応策

①緊急通報や連絡体制の整備

  • 緊急通報システムの導入: 一人暮らしの高齢者にとって、万が一の転倒や体調不良時に迅速に助けを呼べる緊急通報システムは非常に有効です。ホイッスルや携帯電話を常に持ち歩くことも重要ですが、町内会で利用できる見守りサービスや緊急コールシステムの導入も検討しましょう。
  • 連絡先の整理と掲示: 緊急連絡先は冷蔵庫や電話の近くに掲示し、すぐに見つけられるようにしておきます。家族や友人の連絡先を携帯電話に登録し、短縮番号で簡単に連絡が取れるようにしておくことも便利です。

②鍵の管理と外部支援

  • 信頼できる人への鍵の預け入れ: 近隣に住む家族や信頼できるご近所の方に鍵を預けておくことで、緊急時に対応してもらうことが可能です。また、町内会で「見守り活動」を行っている場合は、その活動を利用し、鍵の管理や緊急時の対応を頼むことができます。

③地域の見守りネットワークの活用

  • 見守りサービスや町内会の協力: 町内会で定期的に高齢者の安否確認や見守り活動を行っている場合は、積極的に参加しましょう。定期的な訪問や声かけを行うことで、異変に早く気づき、迅速な対応が可能になります。また、独居高齢者のために、訪問介護や緊急時対応を目的とした制度やサービスを事前に調べておくことも大切です。

 3. 緊急入院や入院後の対策

①緊急入院時の準備

  • 必要書類と連絡先の整理: 健康保険証やお薬手帳、緊急連絡先は、家の見やすい場所に保管します。病院にかかる際に必要な書類を一つにまとめ、持ち出しやすい場所に保管しておくことで、入院時にスムーズに対応できます。
  • 金銭管理の委任: 長期入院になる可能性に備え、金銭の出し入れや支払いを信頼できる人に委任しておくと安心です。委任状を作成するなど、入院前に準備しておくことで、入院中の不安を軽減します。

②退院後の生活支援

  • 自宅のバリアフリー改修: 退院後に安全に生活できるように、自宅のバリアフリー改修や手すりの設置を検討します。介護保険を利用して福祉用具の貸与や住宅改修ができるため、ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談して必要なサポートを受けます。
  • 訪問介護やリハビリの利用: 退院後に自宅での生活が難しい場合、訪問介護や通所リハビリなどの支援を利用することが可能です。町内会で情報を共有し、必要な支援サービスに早めにアクセスできるようにしておくことが大切です。

 4. 災害時や緊急時の備え

①災害時の避難対策

  • 避難ルートと避難場所の確認: 災害時に自力で避難が難しい場合、近隣の人や町内会の協力が不可欠です。避難ルートや避難場所を事前に確認し、避難時のサポートが受けられる体制を整えておくことが重要です。町内会で定期的に防災訓練を行い、避難方法や連絡体制について共有することも役立ちます。
  • 緊急避難用の物品準備: いつでも避難できるよう、必要な薬や健康保険証、常備薬などをまとめた非常持ち出し袋を準備しておきます。また、避難所に行く際に必要な衣類や食料、水を含めた準備も忘れずに行います。

②自宅での孤立を防ぐための準備

  • 町内会での情報共有: 高齢者が多い地域では、特に災害時に孤立しないために、町内会の中での情報共有や緊急連絡網の構築が重要です。お互いに安否確認や連絡を取り合い、緊急時に協力して行動できる体制を作りましょう。

 5. 長期的な健康と生活支援

①定期的な医療チェックと健康維持

  • 定期的な通院や健康診断の実施: 転倒や体調不良を防ぐため、定期的に病院で診察を受けることが大切です。特に慢性疾患や持病がある場合、継続的な医療管理が必要ですので、家族や近隣の協力を得て、通院の際のサポートを依頼しましょう。
  • 体力維持のための運動: 町内会や地域で開催されている健康体操や運動教室に参加し、定期的に体を動かすことで、転倒リスクを減らし、健康を維持します。特に高齢者にとっては、バランス感覚を保つための軽い運動が重要です。

②地域の支援ネットワークの活用

  • 地域包括支援センターの利用: 退院後や日常生活で困ったことがある場合、地域包括支援センターを活用し、介護サービスや生活支援について相談します。町内会でも定期的に情報を共有し、サポートを必要としている方が支援を受けやすい環境を作りましょう。

 まとめ

町内会全体で高齢者の安全と健康を守るため、日常生活での備えや、緊急時・災害時の対応策を共有し、協力体制を強化しましょう。個人での準備に加え、地域での見守りや情報共有が、安心して暮らせる地域づくりに繋がります。

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