記述式ケース問題25 85歳女性、アルツハイマー型認知症、短期記憶の喪失、自力排泄が困難

排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題

⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html

ケース25 排泄ケアが必要なアルツハイマー型認知症のアドバイス

85歳女性のBさんは、アルツハイマー型認知症の中期段階にあり、短期記憶の喪失が進んでいます。自力での排泄が難しくなり、トイレに行くタイミングを忘れがちで、しばしば失禁をしています。Bさんは周囲の助けを拒むことが多く、介護スタッフがオムツ交換やトイレ誘導を試みても、抵抗することがあります。最近、Bさんの皮膚に湿疹が見られ始め、スキンケアに対しても適切な対応が求められています。家族は介護の負担が増え、どのように対応すべきか悩んでいます。

質問1 排泄ケア相談員として、Bさんの排泄ケアにおいて考慮すべき重要なアセスメント項目を挙げ、それに基づいて提案するべき具体的なケア方法を記述してください。

質問2 Bさんが介護スタッフや家族の助けを拒否する理由を認知症の特性を踏まえて説明し、その対策として現場で見落とされがちな心理的ケアのアプローチを提案してください。

質問3 Bさんに対する感染管理やスキンケアの観点からの適切な対策を示し、排泄ケアの中で見落としがちな要素を挙げて対策を提案しなさい。


解答例

質問1の解答

Bさんの排泄ケアにおける重要なアセスメント項目は次の通りです

  1. 身体的状態の確認
    • 尿意や便意の認識能力 アルツハイマー型認知症の進行に伴い、Bさんは尿意や便意を感じる能力が低下している可能性があります。排泄リズムやタイミングを記録し、失禁を予防するために定期的なトイレ誘導を計画します。
    • 運動能力の確認 Bさんがトイレまで自力で移動できるかどうかを確認し、必要に応じて歩行補助具の使用や介助が必要かを判断します。
  2. 心理的状態の評価
    • 抵抗感の理由 Bさんは助けを拒否することが多く、これは認知症による混乱や羞恥心、または自立を維持したいという意志の表れである可能性があります。そのため、トイレ誘導やオムツ交換に対する心理的な抵抗感に配慮する必要があります。
  3. 具体的なケア提案
    • 定期的なトイレ誘導 Bさんがトイレのタイミングを忘れないよう、定期的にトイレに誘導し、適切なサポートを行います。朝・食後・就寝前など、失禁が多い時間帯を特定し、そのタイミングに合わせて誘導することが有効です。
    • 柔軟な対応とリラックスした環境作り トイレ誘導やオムツ交換をスムーズに行うために、Bさんがリラックスできる環境作りや、無理のない言葉がけが重要です。「一緒に行きましょう」や「トイレに行くと気持ちがいいですよ」など、肯定的な言葉で誘導します。

質問2の解答

Bさんが介護スタッフや家族の助けを拒否する理由は、認知症による心理的な影響や羞恥心、自立の意識が関与している可能性があります。アルツハイマー型認知症の特性として、記憶や判断力の低下に加え、羞恥心や混乱が強くなるため、助けを拒否したり、抵抗感を持つことがよくあります。

  1. 心理的ケアのアプローチ
    • Bさんの自尊心を尊重する Bさんの自立を維持したいという気持ちに配慮し、助けを必要とする場面でも、Bさんが自分でできる部分を見つけてサポートします。たとえば、「私が少し手伝いますね」「一緒にやりましょう」といった言葉で自分が関与できる感覚を持たせます。
    • 安心感を提供する Bさんの不安や混乱を和らげるために、優しく安心感を与える声かけが大切です。介護スタッフや家族が慌てたり、強制的に介助を行おうとするとBさんの抵抗が強くなるため、落ち着いた口調での対応が有効です。
  2. 家族へのアドバイス
    • 家族には、Bさんが助けを拒否する際、焦らずに対処するよう伝えます。Bさんができる部分は見守り、介助が必要な時も「手伝わせていただけますか?」といった言葉でアプローチします。また、家族もストレスを感じやすいため、ケアに疲れた場合は周囲に相談することの重要性を強調します。

質問3の解答

Bさんの排泄ケアにおいて、感染管理やスキンケアは非常に重要です。特に、皮膚の湿疹やトラブルが発生している場合、適切なケアが必要です。

  1. 感染管理の対策
    • オムツ交換時の手洗いや手袋の使用 オムツ交換時には手袋を着用し、適切に排泄物に触れることを防ぎます。オムツ交換後は、手洗いを徹底し、感染予防に努めます。
    • トイレやオムツ交換台の消毒 Bさんが使用するトイレやオムツ交換台は定期的に消毒し、衛生的な環境を維持します。失禁が頻繁に発生している場合、周囲の環境も清潔に保つことが求められます。
  2. スキンケアの対策
    • 湿疹への対応 湿疹が見られる場合、皮膚を清潔に保ち、適切な保湿ケアを行います。オムツ交換時には、皮膚を擦らないように注意し、専用の保湿クリームを使用して乾燥やかぶれを防ぎます。
    • こまめなオムツ交換 オムツが汚れたまま放置されると、皮膚が湿疹を起こしやすくなります。定期的なオムツ交換と皮膚の清拭が重要です。
  3. 見落としがちな要素
    • 皮膚の観察不足 皮膚トラブルが発生していても、見逃されることがあります。特に認知症の利用者では、痛みや不快感を自分で表現できないことが多いため、定期的に皮膚の状態を観察することが必要です。
    • 利用者の水分摂取の確認 水分摂取が少ないと便秘や尿路感染症のリスクが高まります。Bさんが十分に水分を摂取できるよう、適切に水分補給の声かけを行います。

解説

これらの設問と解答例を通じて、アルツハイマー型認知症の利用者に対する排泄ケアにおける、身体的・心理的ケアの両方を包括的に理解し、対応するための高度な知識と判断力が養われます。

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