記述式ケース問題31 82歳女性、アルツハイマー型認知症、暴力や暴言
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
ケース31 利用者Aさんの情報を次に示します。
患者情報
Aさん(82歳、女性)
背景
Aさんはアルツハイマー型認知症を患っており、最近、暴力や暴言が見られるようになりました。また、徘徊の行動もあり、トイレに行くことを強く拒否するため、排泄ケアが困難です。家族はAさんを自宅で介護していますが、暴言や暴力に困り果て、サポートを求めています。
質問
Aさんに対して、排泄ケアを効果的に行うためのアドバイスをPDCAサイクルに基づいて考え、経過観察を行いながら数回のサイクルを回した場合の継続的なアドバイスを提供してください。
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解答例
1.
Plan(計画)
- 目標 Aさんの排泄ケアを受け入れられるようにし、暴力や暴言を減少させ、徘徊の行動を抑えること。
- アプローチ
- 環境調整 安全で安心感を持たせるために、トイレへの移動経路を整理し、明るく見やすい環境を整える。
- コミュニケーション戦略
Aさんにとって安心できる人物が寄り添い、穏やかな声かけを行う。暴言に対しては冷静に対応し、感情を刺激しないように心がける。
- 活動の導入 Aさんの興味を引くような簡単な活動(音楽、手工芸など)を通じて、気分を落ち着けてから排泄ケアに移行する。
2.
Do(実行)
- 初回訪問時 Aさんが興味を示しやすい音楽をかけながら、リラックスできる環境を提供する。まずはトイレに行くことを楽しめるように、遊び感覚で誘導する。
- Aさんが暴力的な反応を示した場合には、無理にトイレに連れて行かず、一時的に距離を置き、落ち着くまで待つ。その後、再度声をかけてアプローチする。
3.
Check(評価)
- 経過観察 初回の訪問から1週間後、Aさんの排泄状況を評価する。具体的には、排泄の成功率、暴力・暴言の頻度、トイレに行くことへの受容度を観察し、記録する。
- Aさんの家族ともコミュニケーションを取り、どのように感じているか、日常生活における変化を確認する。
4.
Act(改善)
- 改善策
- 初回の訪問後、Aさんが暴言を言う場面が多かった場合は、その原因を探る。ストレスの要因や不安を和らげるための工夫をさらに行う。
- Aさんの好きな写真や物をトイレ周辺に飾り、安心感を持たせる工夫をする。また、リラックスするための香りや、触感を取り入れることを検討する。
PDCAサイクルの繰り返し
- 1回目のサイクル
- Aさんは初回のアプローチを通じて少しトイレに行くことを受け入れ始めたが、暴言や暴力が完全には収まらなかった。
- 2回目のサイクル
- Aさんにトイレへの移動をもっと楽しんでもらうために、手工芸やおしゃべりを取り入れる。これにより、トイレへの誘導がスムーズになり、排泄の成功率も向上。しかし、時折暴言が出ることもあり、さらなる工夫が必要であると判断。
- 3回目のサイクル
- Aさんは、特定の活動を通じてトイレへの抵抗感が少しずつ和らぎ、家族との関わりも増えてきた。暴言は減少し、徘徊の頻度も少なくなった。引き続き、Aさんの気持ちに寄り添いながら、トイレに行くことを楽しい体験にするためのアプローチを続ける。
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解説
このPDCAサイクルを通じて、Aさんの排泄ケアが少しずつ改善され、暴言や暴力の頻度が減少しました。今後も継続的な観察と調整を行い、Aさんが快適で安心して過ごせるような支援を提供していくことが重要です。