小論文 人生100年時代における高齢者ケアの課題と提案

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人生100年時代における高齢者ケアの課題と提案

高齢化社会における「ピンピン・ヨロヨロ・ドタリ」の現実と対策

(排総研 山口)

【はじめに】

近年、人生100年時代と称されるようになり、多くの高齢者が「ピンピンコロリ」(健康に長生きして、突然死を迎えること)を目指しています。しかし、その願いが叶うのはごく少数の幸運な人に過ぎません。現実的には、多くの高齢者は80代、90代になると「ヨロヨロ」(体が弱り、日常生活に支障をきたす状態)として過ごし、やがて「どたり」と倒れ、誰かの世話になりながら生活することが多いのです。このような「ピンピン・ヨロヨロ・どたり」という現実に直面する高齢者の増加は、日本社会にとって大きな課題となっています。

 

【高齢者の現実と課題】

まず、なぜ「どたり」後は成り行きまかせで迎え、結局は子供に丸投げとなってしまうのでしょうか。一つの要因として、高齢者自身やその家族が十分な準備をしていないことが挙げられます。高齢者の介護には多くの時間と労力が必要ですが、介護に関する知識や技術を持っている家族は少ないです。また、日本の伝統的な家族観念から、介護は家族が担うべきというプレッシャーも依然として強く存在しています。

 

さらに、社会全体の介護サービスの提供体制も十分ではありません。厚生労働省の調査によれば、介護サービスを必要とする高齢者の数は増加の一途を辿っており、2025年には介護を必要とする高齢者の数が700万人を超え、寝たきり高齢者は200万人になると予測されています。このような状況下で、家族が介護の全てを担うことは現実的ではありません。

 

【高齢者の処世術と生涯学習】

このような状況を改善するためには、健康増進・維持だけでなく、高齢者が病とともに生きるための処世術を学ぶことが重要です。例えば、適切なリハビリテーションや生活習慣の改善、介護サービスの利用方法などを知ることが大切です。これにより、高齢者自身ができるだけ自立した生活を送ることが可能となり、家族の負担も軽減されるでしょう。

 

日本は人類が未踏の少子超高齢化社会に直面しており、この分野での経験知の蓄積がまだ十分ではありません。そこで、生涯学習の場で高齢者向けの教育プログラムを提供することが必要です。具体的には、地域のコミュニティセンターやオンライン講座などで、健康管理や介護の知識を学ぶ機会を増やすことが考えられます。

 

【社会全体の取り組み】

さらに、行政や企業も協力して、高齢者が安心して暮らせる社会を構築する必要があります。例えば、バリアフリーの住宅や公共施設の整備、高齢者向けのサービスの充実などが求められます。政府は「地域包括ケアシステム」を推進しており、地域全体で高齢者を支える体制を整備することを目指しています。このシステムの下では、医療・介護・生活支援が一体となったサービスが提供され、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できる環境が整えられます。

 

また、地域コミュニティの支援体制を強化し、孤立しがちな高齢者が安心して暮らせる環境を整えることも重要です。ボランティア活動や地域のサポートネットワークの拡充により、高齢者が社会とつながりを持ち続けることができます。

 

【考察・結論】

総じて、高齢化社会における「ピンピン・ヨロヨロ・ドタリ」の現実を受け入れつつ、高齢者が自立した生活を送るための対策を講じることが求められます。これは、個々の高齢者やその家族だけでなく、社会全体が取り組むべき課題であり、日本が持続可能な社会を実現するための重要な一歩です。

 

具体的な対策としては、高齢者自身が健康維持や病とともに生きるための知識を学び、生涯学習を通じて自己管理能力を高めること、社会全体で介護サービスを充実させ、家族の負担を軽減すること、地域コミュニティや行政が一体となって高齢者を支える体制を整えることが必要です。これにより、高齢者が安心して暮らせる社会を実現し、日本が直面する少子超高齢化という未曾有の課題に対応していくことができるでしょう。

 

【参考文献】

     春日キスヨ. 『百まで生きる覚悟 超長寿時代の「身じまいの作法」』. 光文社, 2018

     日本財団ジャーナル編集部. 『不足、医療人材不足、社会保障費の増大—間近に迫る「2025年問題」とは?』. 日本財団ジャーナル, 2023.05.24

     内閣府. 令和4年版高齢社会白書(全体版)1高齢化の現状と将来像』. 内閣府, 2022

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