記述式ケース問題29 80歳・女性 軽度の認知症、夜間は失禁が頻繁に発生

排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題

⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html

ケース29 利用者C80歳・女性)

利用者Cは、軽度の認知症を抱えています。日中は比較的自立して生活しているものの、夜間は失禁が頻繁に発生しています。これにより、家族は夜間の介助に大きな負担を感じています。利用者Cはまた、日中にトイレを探し回ることが増え、混乱してしまうことが多く、これがストレスの一因となっています。家族は、この状況に対してどのように対応すれば良いのか悩んでおり、介護スタッフも適切なサポート方法に困っています。


質問

  1. 利用者Cに対して、排泄ケア相談員としてどのような排泄ケア改善策を提案しますか?
  2. 家族に対して、夜間の失禁に関する負担軽減のためのアドバイスを提供してください。
  3. 介護スタッフに対して、日中のトイレ混乱に対する具体的な支援方法をどのように指導しますか?

解答例

1. 利用者Cに対する排泄ケア改善策

利用者Cの状況では、夜間の失禁と日中のトイレ混乱を解消するため、以下の改善策を提案します。

  • 夜間の排泄ケア  夜間の失禁が頻繁に発生する場合、定期的にトイレへ誘導する「タイムドトイレ」を導入します。就寝前に必ずトイレに行く習慣をつけ、さらに深夜12回の定期的なトイレ誘導を行うことで失禁の予防を図ります。また、ポータブルトイレの設置を検討し、トイレまでの移動を短縮することで、夜間に利用者が混乱するリスクを減らします。
  • 排泄環境の改善  トイレの場所がわかりやすいように、寝室からトイレまでの道筋に照明(LEDライトなど)を設置し、視覚的に認識しやすい環境を整えます。また、トイレのドアに目立つサインを貼り、利用者が迷うことなくトイレを見つけられるよう工夫します。
  • 精神的サポート  失禁に対する羞恥心や不安感が強い場合、排泄ケアが恥ずかしいことではないと伝え、安心感を持ってケアを受け入れられるようにします。心理的なサポートを継続的に行い、利用者が尊厳を保ちながら生活できる環境を整えることが大切です。

2. 家族に対する夜間の負担軽減のためのアドバイス

家族の夜間の負担を軽減するため、以下の方法を提案します。

  • 見守り技術の活用  ベッドセンサーやモーションセンサーを使用し、利用者がベッドを離れた際にアラームが鳴るように設定します。これにより、家族が利用者の動きを常時見守る必要がなくなり、夜間の負担が軽減されます。
  • 外部リソースの活用  地域の訪問介護サービスや夜間のみのケアサービスの利用を検討します。また、ショートステイやデイサービスを利用し、家族が定期的に休息を取れるような支援体制を整えることも重要です。これにより、家族が自分自身の健康を守りながら、利用者Cに必要なサポートを提供することができます。
  • 家族への心理的サポート  夜間の排泄ケアに関して家族が感じる負担感を軽減するため、介護者支援グループやカウンセリングなど、精神的なサポートを受けられる場の提供も検討します。家族が自身の気持ちを整理し、適切に対応できるよう、情報共有や相談を行う場を確保します。

3. 介護スタッフへの日中のトイレ混乱に対する支援方法の指導

介護スタッフには、日中のトイレ混乱を減らすため、以下の具体的な支援方法を指導します。

  • 定期的なトイレ誘導  利用者がトイレを探し回らないよう、定時にトイレに誘導することを推奨します。定期的な誘導により、利用者の混乱を防ぎ、排泄リズムを整えることができます。さらに、トイレに行く時間を記録し、排泄パターンに基づいたケアを提供します。
  • 視覚的・環境的な支援  トイレの場所を視覚的に認識しやすいよう、トイレに誘導するサインや矢印を設置します。また、トイレ内の環境を清潔に保ち、利用者が安心して利用できる空間を提供します。利用者がトイレで混乱しないよう、シンプルで安全な設計を心がけます。
  • 穏やかなケアアプローチ  利用者Cが混乱した際には、介護スタッフは冷静で穏やかな態度で対応し、過度に焦らせることなく、安心感を与えながらケアを進めます。認知症の利用者に対するケアでは、言葉遣いやジェスチャーが非常に重要であり、リラックスした雰囲気を保つことで利用者の混乱を軽減します。

解説

この解答例では、利用者Cの身体的状態や精神的ケアの必要性を考慮し、夜間の失禁や日中の混乱に対する具体的な改善策を提案しています。また、家族の負担を軽減するための方法や、介護スタッフが提供すべき具体的なサポートについても詳しく記述しています。これにより、排泄ケアの専門的なアプローチを学び、利用者やその家族、介護スタッフ全員がより良いケアを提供できるよう支援することを目的としています。

コメント

このブログの人気の投稿

排泄ケア相談員の育成に向けて

記述式ケース問題21 83歳・男性、下肢の筋力低下と軽度の認知症、排泄を感じるタイミングに問題

記述式ケース問題15 85歳・男性、パーキンソン病と糖尿病、排泄感覚なし、頻尿