記述式ケース問題36 75歳男性。レビー小体型認知症の診断を受けている。最近、暴力的な行動と介護拒否が増えており、排泄ケアに対する協力が得られない。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
ケース36
75歳男性。レビー小体型認知症の診断を受けている。最近、暴力的な行動と介護拒否が増えており、排泄ケアに対する協力が得られない。身体的には歩行可能だが、トイレの誘導が困難であり、失禁が頻繁に見られる。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら継続的な排泄ケアに関する支援計画書を作成してください。具体的には、短期的な目標と長期的な目標を設定し、初回アドバイス、短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月以内)、長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月以内)をそれぞれ詳細にまとめてください。
解答例
支援計画書
患者情報
- 名前 田〇〇朗
- 年齢 75歳
- 性別 男性
- 診断 レビー小体型認知症
- 主な問題 暴力的行動、介護拒否、排泄ケアの協力が得られない、失禁
短期的目標
- トイレ誘導を行う際の暴力行動を減少させる(初回から1ヶ月以内)。
- 排泄のサインやトイレ誘導への協力率を50%に向上させる。
長期的目標
- トイレ誘導を80%の成功率で行えるようにする(3ヶ月以内)。
- 患者の排泄に関する不安を軽減し、自主的にトイレに行く頻度を増やす。
初回アドバイス(1日目)
- 環境の整備
- トイレへの導線を分かりやすくし、目印や案内板を設置する。
- トイレ内の清掃や明るさを確保し、安心感を持たせる。
- 関係性の構築
- 患者との信頼関係を築くため、常に穏やかな態度で接する。名前を呼びかけながら、「一緒に行こうか」と優しく声をかける。
- 患者が不安を感じる状況を理解し、彼の気持ちに寄り添う姿勢を示す。
- 暴力的行動への対策
- 患者が暴力的な行動を示す際は、冷静に距離を取り、落ち着くまで待つ。
- その後、彼が落ち着いた際に再度声をかけ、トイレ誘導を試みる。
- 家族・介護者への支援
- 家族や介護者に対しても、ストレス管理や感情的なサポートを提供する。
- 定期的なカンファレンスを設け、情報共有や意見交換を行う。
短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月後)
- 経過の評価
- トイレ誘導の成功率と暴力的行動の頻度を記録し、どのような状況で改善が見られたかを分析する。
- 介護者に、どのようなアプローチが効果的だったかをフィードバックする。
- 成功体験の強調
- トイレ誘導が成功した際には、「今日はよくできたね」と言葉で励ますことで、患者の自信を高める。
- 笑顔や称賛の表現を使い、トイレ誘導に対する意欲を促す。
- 患者の反応に基づく対応
- 患者がトイレに行くことに抵抗感を示した場合、その理由をじっくり聞き、安心感を持たせるための対策を考える。
- 自分のペースで行動できるよう配慮し、無理にトイレに行かせない。
- 家族・介護者への継続的なサポート
- 介護者に対し、短期間での結果を報告し、適切なサポート方法を共有する。
- 笑顔や肯定的な言葉を使うことで、介護者のストレスを軽減する方法を指導する。
長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月後)
- 再評価の結果
- トイレ誘導の成功率と患者の心理状態を確認し、どの改善策が有効であったかを振り返る。
- 周辺症状の変化を見ながら、排泄ケアへの協力が得られているか評価する。
- 選択肢の提示
- トイレ誘導の際に、患者に選択肢を与える。「今行きたいのか、少し待ちたいのか、どうする?」と選ばせ、自分の意思を尊重する。
- 自立感を促進することで、トイレへの意欲を高める。
- 不安の軽減
- 周辺症状の変化に応じて、リラックスできる環境を整え、不安感を和らげる工夫を行う。
- 日常的に心地よい活動(散歩や趣味)を取り入れ、患者の精神的健康をサポートする。
- 家族・介護者への長期的な支援
- 家族に対して定期的なフォローアップを行い、サポート体制の強化を図る。
- 地域の資源やサポートグループを活用し、介護者が孤立しないように支援する。
解説
この支援計画書は、困難事例に対し、環境整備と心理的アプローチを通じて排泄ケアの質を向上させることを目指しています。経過観察を行い、柔軟に対応することで、患者の反応を観察し、信頼関係を築いていくことが重要です。