記述式ケース問題34 82歳のCさんは、前頭側頭型認知症を患っており、行動の変化や判断力の低下が見られます。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
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ケース34
82歳のCさんは、前頭側頭型認知症を患っており、行動の変化や判断力の低下が見られます。Cさんは最近、トイレの必要性を理解できず、部屋の中で突然排泄をしてしまうことがあります。また、介護者がトイレに誘導しようとしても強い抵抗を示し、時には怒り出すことがあります。Cさんは過去には排泄に関する自立心が強く、自分でできることを誇りにしていましたが、最近は失敗が増え、介護者との信頼関係も崩れかけています。
Cさんの家族は、自尊心を守りつつ、トイレの失敗を減らすための支援を試みていますが、どう対応すれば良いか迷っています。家族は、Cさんの人格が大きく変わってしまったように感じ、困惑しています。
設問
- Cさんがトイレの必要性を理解できずに部屋で排泄してしまう場合、どのような環境的・行動的な対策が考えられますか?前頭側頭型認知症の特性を踏まえた具体的な提案をしてください。
- Cさんがトイレに誘導されることに対して強い抵抗を示す場合、どのように対応すべきでしょうか?効果的なコミュニケーション方法を含めてアドバイスをしてください。
- Cさんの自尊心を守りながら、排泄ケアを進めるために家族はどのような支援ができるでしょうか?心理的な配慮と実際的なケア方法を提案してください。
解答例
設問1 Cさんがトイレの必要性を理解できずに部屋で排泄してしまう場合、どのような環境的・行動的な対策が考えられますか?前頭側頭型認知症の特性を踏まえた具体的な提案をしてください。
前頭側頭型認知症では、判断力や抑制が低下し、社会的な行動のルールを忘れることが多く見られます。Cさんの排泄に関する行動は、この特性に起因している可能性があります。次の環境的・行動的な対策が有効です。
- トイレの定期的な声掛け
Cさんがトイレの必要性を自ら判断できない場合、一定の時間ごとに「トイレに行く時間ですよ」と優しく声をかけ、トイレのタイミングを定期的に設定します。
- 視覚的なサポート
トイレの場所を認識しやすくするため、トイレのドアに分かりやすい標識をつけ、トイレまでの道筋をはっきりと表示します。また、トイレのドアを常に開けておくことで、Cさんが迷わずトイレに入れるようにします。
- 部屋のレイアウト調整
Cさんが部屋で排泄してしまう可能性を減らすため、トイレまでの動線を簡潔にし、移動しやすい環境を整えます。また、緊急時にはポータブルトイレの設置も考慮します。
設問2 Cさんがトイレに誘導されることに対して強い抵抗を示す場合、どのように対応すべきでしょうか?効果的なコミュニケーション方法を含めてアドバイスをしてください。
前頭側頭型認知症のCさんがトイレに誘導されることに抵抗を示す場合、感情を刺激しない穏やかな対応が求められます。次のコミュニケーション方法が効果的です。
- 穏やかな声掛け
抵抗がある場合、強制せずに「一緒に少し歩いてみましょう」と声をかけ、無理にトイレに行かせるのではなく、トイレに近づく流れを作るようにします。トイレという言葉自体がストレスを引き起こす可能性があるため、別の自然な表現を使います。
- 共感と安心感の提供
Cさんが不安を感じた際には、「心配しないでください、あなたが安心できるようにお手伝いします」といった共感的な言葉を使い、抵抗感を和らげます。ユマニチュードのようなケア手法を使い、目を合わせて優しい表情を見せることで、Cさんに安心感を与えます。
- タイミングの調整
抵抗が強い場合、すぐに誘導せず、数分待って再び声をかけることで、Cさんが落ち着いてから対応できるようにします。
設問3 Cさんの自尊心を守りながら、排泄ケアを進めるために家族はどのような支援ができるでしょうか?心理的な配慮と実際的なケア方法を提案してください。
Cさんの自尊心を傷つけずに排泄ケアを行うためには、家族が尊厳を尊重しつつ、Cさんの気持ちに寄り添った支援を行うことが重要です。
- 失敗を指摘しない
Cさんが排泄に失敗した場合、失敗を指摘せずに静かに対応し、「こういうこともありますよ、大丈夫です」と優しく励ますことで、Cさんの自尊心を守ります。失敗したときのケアはなるべく速やかに行い、Cさんがその場で長く不快な思いをしないように配慮します。
- 前向きなアプローチ
トイレに行く際に「お手伝いします」という表現を使い、Cさんにとって介助が自然な行為であると感じさせるようにします。強制感を減らし、トイレに行くことが自立的な行為と感じられるようなコミュニケーションを心がけます。
- ルーティン化のサポート
家族が定期的にトイレに誘導することで、トイレに行く行為をルーティン化し、Cさんがストレスを感じることなく自然にトイレに向かう習慣を作ります。
これにより、Cさんの自尊心を守りながら、トイレの失敗を減らすことができ、家族も安心してケアを行うことができます。