記述式ケース問題35 75歳男性、認知症(アルツハイマー型)と診断されている。最近、排泄ケアに対する拒否が強く、失禁が頻繁に起こる。
排泄ケア相談員・シニアコース・記述式問題
⇒※排泄ケア相談員については、家庭の排泄ケア相談所のWEBを参照ください。 https://www.sutokukai.or.jp/cssc/about/haisetsu.html
ケース36
75歳男性、認知症(アルツハイマー型)と診断されている。最近、排泄ケアに対する拒否が強く、失禁が頻繁に起こる。家庭内での介護は家族が担っており、介護者は疲労やストレスを感じている。徘徊の傾向があり、トイレ誘導が困難な状況が続いている。
質問
この患者に対して、経過観察を行いながら継続的な排泄ケアに関する支援計画書を作成してください。具体的には、短期的な目標と長期的な目標を設定し、初回アドバイス、短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月以内)、長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月以内)を、在宅介護者が勇気を持てるように具体的かつポジティブな内容でまとめてください。
回答例
支援計画書
患者情報
- 名前 佐〇〇郎
- 年齢 75歳
- 性別 男性
- 診断 アルツハイマー型認知症
- 主な問題 排泄ケアへの拒否、頻繁な失禁、トイレ誘導の困難
短期的な目標
- トイレ誘導における拒否行動を20%減少させる(初回から1ヶ月以内)。
- 失禁の回数を週に2回以下に抑える。
長期的な目標
- トイレ誘導を50%の成功率で行えるようにする(3ヶ月以内)。
- 患者が自発的にトイレに行く頻度を増加させる(週に1回以上の自発的トイレ利用)。
初回アドバイス(1日目)
- 環境の整備
- トイレへの導線を簡素にし、患者が安心して移動できるようにする。看板やシンプルな照明を利用し、明るさを確保。
- トイレの周囲を清潔に保ち、安心感を持たせる。
- 信頼関係の構築
- ゆっくりとした言葉で、「一緒にトイレに行こう」と声をかける。最初は手をつないで、一緒に歩くことで、安心感を提供する。
- 患者の気持ちに寄り添い、焦らず待つ姿勢を示す。
- 介護者のサポート
- 介護者に対し、トイレ誘導は無理をせず、患者のペースに合わせるよう指導する。小さな成功体験を積み重ねることを重視する。
短期目標に向けたアドバイス(1ヶ月後)
- 進捗の評価
- トイレ誘導の成功率と失禁の頻度を記録し、進捗状況を振り返る。良い結果が出た場合は、自信を持たせるように声かけを行う。
- 介護者のストレスを軽減するために、ケアの成果を共有し、褒め合う時間を設ける。
- ポジティブな強化
- トイレ誘導が成功した際には、「今日はよくできたね」と具体的に褒め、自己肯定感を高める。
- 成功体験を増やすために、小さな目標(例えば、1回の誘導を成功させる)を設定し、その達成を共に喜ぶ。
- 行動療法の導入
- トイレ誘導の際、患者が落ち着いているタイミングを見極め、ゆっくりと誘導する。リラックスした状態で行動を促すことが大切。
長期目標に向けたアドバイス(3ヶ月後)
- 定期的な評価
- トイレ誘導の成功率や自発的なトイレ利用の頻度を記録し、患者の状態の変化を見逃さないようにする。
- 進捗を家族全体で共有し、サポートを強化するためにミーティングを定期的に行う。
- 自立支援の強化
- 患者に選択肢を与えることで、自分でトイレに行く決定を促す。「今行きたいのか、少し待つか、どうする?」と声をかける。
- 自発的にトイレに行くような環境を作るため、トイレの時間を毎日のルーチンに組み込む。
- 家族・介護者への教育
- 家族や介護者に、排泄ケアにおける成功事例や方法をシェアし、共に学び合う場を設ける。
- 介護者のメンタルヘルスを重視し、必要に応じて相談の機会を提供する。
解説
この支援計画書は、困難事例に対し、患者と家族が共に前向きに取り組むための具体的な方法を示しています。介護者が自信を持ち、患者のケアをより良くするために、進捗を記録し、ポジティブなフィードバックを重視することで、共に成長していける環境を整えることが重要です。